ニコ生シノドス抄録 / 飯田泰之×城繁幸×片岡剛士「若者のための労働市場改革」(前編)

 メールマガジンαシノドスの最新号に掲載されたものです。基本的に、三人とも似たようなスタンスだそうで(城氏がそうなのか最後まで疑問ですが)、金融政策中心の景気回復+(景気面への影響に配慮しながらの)構造的問題への取り組みです。ところでやはり大きな問題はロスジェネ、特に30代以上の雇用問題です。雇用問題というよりも人的資本の低落問題と言い換えてもいいかもしれない。

飯田 03年から07年にかけての小泉・竹中の構造改革のせいで失業
者が増えたイメージがありますが、当時は逆に一本調子で失業率が下がっ
ていて、有効求人倍率の改善も続いていました。個人的に注目している
のは例年12月の失業率は改善する傾向があるのですが、2010年末
は全体の失業率が改善しているのに25〜34歳の失業率は悪化してい
るというかなり異常な事態が生じています。

片岡 これは、かなり驚くべき状態ですね。全体の動向とは別に、若年
層の失業率は90年代から2000年代にかけてずっと上がってきて格
差が広がっている。これは景気の問題だけではなく構造的な要因が作用
していると思います。

飯田 つまりアラサーの労働市場だけが悪い。他の年代も決して良くは
ないけれど好転しているのに、30歳前後だけが継続して悪化している。

これはなぜなのか? 答えは後編なんだろけどいくつか示唆する発言もある。

飯田 06〜07年頃、それほど景気回復していないのに何故あれほど
社会が明るくなったのかというと、決してバブルではなく閉塞感を緩和
する手段になっていたからですね。

片岡 そうです。将来に目を向けると、数年後には団塊世代が65歳を
超えて労働力としてはあまり期待できなくなってきます。そうなると、
人口減少によって若年労働力の価値が上がるのではないか。そうした局
面で問題になるのは、いわゆる職歴に大きな空白期間をもつしかなかっ
た「ロストジェネレーション」とそれ以外の若年層で生じる格差です。

「職歴に大きな空白期間」があるロスジェネは、団塊世代が役に立たず、また同時に若年層の労働力の価値が向上してもなおその労働力の価値は低下したままである。これは「職歴に大きな空白期間」があるからだ。つまりこの空白期間の間、人的資本の投資に失敗しているということになる。この点は双曲割引(短視眼的)な態度が長期不況によってさらに強化されてしまい人的資本の投資がうまく行われない、という論点としても拙著『雇用大崩壊』で書いた。同時にこの30歳以上のロス・ジェネの「職歴の大きな空白期間」が問題であるならば、対話中で城氏が言及しているような財政的な方策を勘案するのも橋渡しとしてはやはり有効ではないか? 例えば僕も公務員としての直接雇用を説いたことがある。年齢が経てばたつほど「職歴の大きな空白期間」が重荷になり、景気回復や構造的に団塊の世代が使い物にならなくても、それでも超(へんな言い方だが)構造的に現状の30歳以上の雇用状況が改善しないのであるならば、いますぐにでも公的雇用や30歳以上の採用に財政的支援を行い「つなぎ」にすべきではないだろうか?

解答編?の後半が楽しみである。

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

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