日本銀行文学を味わう

 日本銀行文学を読む。久しぶりに文学観賞をしてみたくなり日本銀行のHPをみてみた。さて今日いれて三回の文学を比較してみたい。

まず「先行きの中心的見通し」なるものを過去三回比較する。2月「先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・ 資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テ ンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。」。

次に震災直後、「わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。消費者物価(除 く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。先行きの中心的な見通しと しては、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくという判断を維持した」。

と震災以前と震災後の中心の見方(w は変わらないのだ。では震災の影響はというと、それはおまけ、但し書きとしてあるにすぎない。あくまでも中心の見方は緩やかな回復+デフレ幅の縮小

 で、今日である。これも日本銀行文学なのでこころして読まれよ。「先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し 圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していく につれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた 需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価 の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる」。

となっている。基本は緩やかな回復+デフレ幅の縮小である、震災はおまけ。

 簡単にいうと日本銀行の中心的な見方は、震災の影響をある種の修飾表現として利用してはいるが、基本は「緩やかな回復+デフレ率の縮小」である。これが官僚=日本銀行の文学である。たぶん世界がひっくりかえってもこのコアな部分=緩やかな回復+デフレ率の縮小は変わらない。味わい深い日本銀行文学。

 さらに現状維持を決めた今回はくせものが登場している。それは僕の表現でいえば、「バブル警戒」というものだ。それは次のなにげない一文にある。「リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外か らの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある」。この海外における資本市場の過熱は過去容易に、日本銀行の脳内では日本の円安傾向としばしばドッキングしたものである。今後、どのように花開く?か興味のある一文といえよう。

 さらに次の文はまさに「あいまいな日本の私」というべき一文であり、さすが日本銀行文学というべきものである。

「物価面では、国際商品市況 の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想 物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある」

 いまの一文は果たして、上なのか下なのか、正直よくわからないのだが、きっと日本銀行は賢明に両方のリスクをみているのだろう。くれぐれも、あとの弁明のためにすべての方向をみておくという官僚的な弁明準備とは間違えないようにw あー素晴らしいニチギン文学。