『別冊 環 横井小楠』

 NHK大河ドラマ龍馬伝』で、松平春嶽の横で豆たべながら辛辣な言葉を龍馬にいってた男ーその変人ぽく描かれていたのが幕末最大の知識人といっていい横井小楠である。彼はドラマの方ではほとんど描かれていないのが残念だが、坂本龍馬との関係は、この『環』が昨年出したすぐれものの横井本に収録された「坂本龍馬と小楠」(源 了圓)が詳しい。そこではドラマの方ではなんかあやしげで龍馬に辛辣なことをいって終わりになってしまうが、あの場面の後史実では、ふたりは意気投合して、知人宅に小舟でのりつけ深夜まで飲みあかし、龍馬は「君がため捨つる命は惜しまねど心かかる国の行末」とセクシーボイスで詠んだという。

 『龍馬の手紙』には、この横井との出会いをきっかけに、当時、横井が練っていた「挙藩上洛計画」に龍馬が一枚も二枚も噛んでいて、それを姉の乙女にあてた手紙が収録されている。それが例の「日本を今一度せんたくいたし云々」という名文句がでてくる手紙なのである。

 そういうエピソードはすべてはしょられ、ドラマは『ハゲタカ』と奇抜な人たちのオンパレードとしてすすんでいるようである。なおこの特集本では、幕末最大の知識人であった横井の経済論から人生行路まで細かく説明されていてなかなか面白く便利だ。

横井小楠―1809-1869 「公共」の先駆者 (別冊環) (別冊環 17)

横井小楠―1809-1869 「公共」の先駆者 (別冊環) (別冊環 17)