自己組織化臨界現象と資本主義の崩壊

 最近、忙しくて、まるでその自分の状態を示しているかのような題名の本。Joshua Cooper Ramoの
The Age of Unthinkable : Why Tne New World Disorder Constantly Surprises Us and What We Can Do about It 。ラモの『思考不可能な時代』を読んだ。ガルブレイスの『不確実性の時代』に題名だけは似ている。実はガルブレイスのその本は読んだことがなくて(笑 最近読んだの以外は初期の価格統制本しか詠んだ記憶ないっす)、あとで本屋にでも買いにいこうかな、と思っております。

 ところでこのラモ氏の本は、パー・バク(理論物理学者)の自己組織化臨界現象というアイディアを今回の経済危機やテロリズムなどに適用して、とられるべき社会的なセキュリティはなんなのか、というテーマで書いた本でした。自己組織化、複雑系、カオスなどなどちょっといままで避けてたテーマ群なんだけど(院生のときに非線形動学の基礎はなんか学んだ記憶が 笑)、この本はすっきり読めました。自己組織化臨界現象というのは、そのバクの説明を簡単に約めると、砂山を一粒一粒砂をおとしながら円錐形に作って行く。はじめのうちはうまく山ができていくんだけど、ある一定の大きさの山になってしまうと、大きな崩落がおこりやすくなる。で、いったい何番目の砂粒がその大崩落を引き起こすかはわからない。わからないけれどもシステムは規模が大きくなるほどに予測不可能な不安定性をはらんでいる……という感じでしょうか。

 (このバクの理論を応用した)ラモの本はなかなか面白くて、例えばアラン・クルーガ―の『テロの経済学』とも近い趣旨のテロリズムの分析を提示していると思います。実はこれも仕事まわりで読んだ本なんだけど、これを読んでからタレブの『ブラック・スワン』をもう一度きちんと読むかな、という気にはなった。ちなみにバクの方は、実はかのマイケル・ウッドフォードと一緒に景気変動をめぐるやはり自己組織化臨界現象を適用した論文を書いてたり、それを一般向けに紹介したのが、ポール・クルーグマンの『自己組織化の経済学』。ここらへんも院生のときに読んだ記憶(もちろん英語論文ベースで。当時は翻訳はなかったはず)があるんだけどもう忘れたなあ。

クルーグマンの本はアマゾンでは品切れですが、ここに訳者あとがきhttp://www.ier.hit-u.ac.jp/~kitamura/PDF/B201.pdfが読めるので便利

The Age Of The Unthinkable: Why the New World Disorder Constantly Surprises Us And What To Do About It

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自己組織化の経済学―経済秩序はいかに創発するか

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