新成人おめでとう。わが国のトップをみればわかるけれども、大人になったらマンガは控えめに 笑*1
最近は、マンガ批評を専門にする人たちにかなり失望感がある*2。こころのどこかで「マンガ読むとバカになる」仮設が本当なんじゃないか、とさえ思えてきている始末 笑。その仮説の傍証になるかどうかは僕の主観に依存しているが(笑)、例えばマンガ批評界?の未成熟性と、同時に進行しているアカデミズムへの詐欺的ともいえる進出ぶりがある。後者は簡単にいえば、マンガ資源の横流しや囲い込み、あるいはマンガ業界の不良債権処理としてそのうち明らかになっていくだろうが(この点については一部、そのうち出るという『マンガ論争勃発』の続編インタビューとかで話したし、これから修正する過程でさらに付加できればしたい)、基本的には「マンガはクール」(ほぼ死語)をモットーとした業界・政府のなんともベタな「産業政策」ぽい、実は身内だけの「商売」に端を発しているのかもしれない*3。
いいかたかえるとマンガ業界ってなんか色と金に過剰に反応しているマインドは中小企業のおっさん社会(例年年末の彼ら業界のパーティーなんかみればその体質明白 笑)そのものである*4。簡単にいうと外部みれてねえ〜世界であり、その写し絵がいまの日本のマンガ批評界だと思えばいいのかな、と思う。さてこんなことが最近、脳裏に浮かんでいるが、このことについて賛同してもらうつもりも理解してもらうつもりもない。
とりあえずエントリーのお題を書いておこう。最近、mixiの方にもちらりと書いたが、もしマンガの発祥を浮世絵に求めるならば経済学者はかなり昔からマンガ批評に独自の貢献をしてきているように思える。目についたものをいくつか紹介しておく。
1 野口悠紀雄「『風の谷のナウシカ』に関する主観的一考察』」 (『超整理日誌』に収録)
……野口氏の残りすべての著作よりもこの論説がいい。比較文化的視点も含めて、その視野の広さには感銘。しかもやはり清算主義だし 笑。
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2 稲葉振一郎『オタクの遺伝子』……『ナウシカ解読』よりも個人的にはこちらの方が格段に読みやすかった。これもジャンルをまたいだ分析と未来経済学とでもいうべき要素が合体。しかし本職の人たちには評価あまりされてない? (稲葉さんからの紹介で、SF研究者からは書評いくつもありで、ほかに切通理作氏がふれているとのこと)
- 作者: 稲葉振一郎
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3 増田悦佐『日本型ヒーローが世界を救う』‥…ここまできたらこの本への積極的評価は意地だぜw つうか最近、また再読したけれどもこれだけおっさんマンガ史観(しかも反産業政策論という意味ではマンガ批評界の大勢と真逆。でもおっさん 笑)を連発できてる本はこれくらい。その実証性のなさも無限w
4 高橋誠一郎『浮世絵と経済学』‥……長く日本の経済学史研究の大御所として活躍。浮世絵研究でも日本の代表的な論客であり、収集家のひとりでもあった。僕はこの人の浮世絵と経済学研究との関連を20世紀の終りにペーパーにしたという貴重な 笑 体験の持ち主である。そこでは高橋の浮世絵に対するフェティシュな欲望と、彼の社会主義的なユートピア論(それを解明している経済学史研究)とのつながりに焦点を当てた。高橋に浮世絵とマンガの連関を書いたものがあったような気もするが定かではない。
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以上の四作はマンガ批評プロパーとかそれに近い人たちのものを読むより相当刺激になる。
それとこれはboxmanさんの指摘に負うけれども、マンガ批評が閉鎖的な中小企業のおっさん社会の価値観に陥っていない実例もある。これもマンガ批評が専門ではない人たちだが。それと小野耕世氏も比較文化的な視点が明白な点で読んでいて啓蒙される。
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こういった業界閉塞的な価値観ではくくれないものをもっと読みたい。
(追加)おまけに上とも関連するmixi日記のエントリーをそのままコピペしておく
たまには内田樹風に書いてみようかな? 笑
『祝福王』を中古で全部揃えて2,3回通読してみた。連載したときに読んで以来だけれども、やはり面白いし、ほとんど記憶に残っている。中古の方の文庫解説は呉智英氏が書いている。同時期にでたこちらはよりカルト性がある『少年の国』を誉めていた。これも文庫で読めるようなので購入した。しかしこの『祝福王』は構想が壮大なんだけれども、社会性がかなり色濃く反映していて、しかも普遍的。なんというか大人の漫画かな(古い形容だけどこれ以外思いつかない)。
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最近、小賢しい社会的パズラーみたいなものをしばしば読むので、いささか「漫画小児病」とでもいいたい気分だったが、十数年前とはいえなんか漫画からこんな緊張感が伝わってきたのは久しぶり。
例えばちまたで評判のベストの類をみると、投票した人たちには悪いが、率直にいって、1)漫画しか読んでない知的関心度の低さ、2)仲間意識=横並び感覚の横溢、3)あえて賭けにでる奇矯な読みの不足w といったものがあまりにも酷いように思える。ちなみに2)のような選出方法は、エコノミストの予測でもあまりいい結果を出すものではない(マンキュー『マクロ経済学』参照)。
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山口昌男の漫画評論にはあまり感じないけれども、鶴見俊輔の漫画論には何か読んでいるとプラスアルファなものを得ているような読後感がある。たぶん彼の漫画論を読んだ後に、彼の佐々木邦論を読んでみたくなるし、そして佐々木邦への関心が、やがてクラインやパースにまでもその関心は及ぶかもしれない。しかしベスト選出者のコメントやその選出された作品上位は、ただの知的な退廃というか、閉塞的なものしか感じないのはなぜだろうか?
簡単にいうと選んでる人たちの頭が悪さにつき合わされてるか、業界の利益あるいは仲間意識だけで選評している人が大多数であるようにしか、僕みたいなただの読者には思えない。
*1:でもマンガは20歳前後にはほとんど読まれなくなっている気がしているんだけど
*2:典型的には年末のベスト本なんかに書いている人たち。年末のベスト2冊を読んで、「マンガばかり読むとバカになる」仮説に確信がもてた 笑。まあ、関係ないけれども、僕が去年読んでて「ああ、これは頭よくないと面白さわからんかも」と漠然と思った二作品『パノラマ島碕談』と『昆虫探偵ヨシダヨシミ』がほぼ無視・低評価されていたことにもちょびっと傍証ww
*3:皆が誉めてる中野晴行氏の『マンガ産業論』は何気にこの「産業政策」の非常にベタなシナリオである。誉めてる人にはたぶん経済学的発想がないのかもしれない。
*4:色と金にはみんな反応しているだろうが、この業界が生み出す色とお金の過剰は単なる市場規制の産物である側面が強い