13年前の本から

 13年前はまだ大学院生でその前々年あたりから負債デフレの理論や20-30年代の日本の経済思想の研究を始めていてそれが少しだけ形になっていた時期でした。そのときに手にした本に原田泰さんたちが編集した『図解デフレのしくみ』という小冊子があります。そのときはあまり気に留めなかったのですが、今回、ちょっと理由があって、それを古書で買い求めて非常に驚いています。そこにはいま現在に至るまでのデフレをもたらした日本銀行の奇妙な政策思想への批判があって、さらに「金のあしかせ」など大恐慌期の経験、昭和恐慌、名目金利だけではなく実質金利にも注目すべきこと、ボスキンの発言からCPIの上方バイアスの存在、大競争(いまでいうグローバル化)や価格破壊(相対価格の問題)がデフレの原因ではない、という指摘など、いまでも十分参考になる内容ですね。これは半分ぐらいはいまの時代に合わせて改訂して、「いまの世間の常識のインフレは虚妄で、デフレが日本経済の実体である」などいれれば十分に使えますね。このほかにも確か講談社現代新書岩田規久男先生の『インフレとデフレ』もすでに出ていました(1990年!)。95年のときのこの編著には以下のような言葉が書かれているのですが、その後の「失われた10年」への本格的な落込みを考えると複雑な気持ちになります。

「現在(もちろん95年当時…田中注)の貨幣供給低迷の背景は何なのか(例えば、バブル期の資産インフレの反省か?)。それが何であれ、大恐慌を引き起こすほど強固(頑固)なものだとは思えない。しかし、景気への十分な配慮を欠く頑迷な金融政策(体制)がデフレ、ひいては不況を生み出す可能性をもつことは常に心に留めておかねばならない」。

 バブル期の資産インフレの反省なのか何なのか今日も一貫して日銀の政策思想は正直よくわからないのですが、ただ「失われた10年プラス」を引き起こすほど見事に頑迷であったし、またいまも景気への十分は配慮は微塵もなくただ単に不況を引き起こしただけでした……。

図解 デフレのしくみ (2時間でわかる)

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