雇用・能力開発機構廃止の問題点

 官邸の有識者会議が機構の廃止・解体を提示した。この廃止の方向をまず支持したい。同機構を廃止する理由については、拙著『日本型サラリーマンは復活する』であげたのでここでは触れないが簡単にいえば民間で完全にできるものをやる必要もなく、また独自の施策もコストが大きいだけで実効性にきわめて乏しいからだ(「私のしごと館」はその象徴にすぎない)。

 だが、廃止がたとえ基本方針であっても喜んでばかりはいられない。なぜなら廃止とはこの組織がこの世界からなくなることを意味してはいないからだ。「解体」というのは再膨張のきっかけにすらなるかもしれず根気よくみていかなくてはいけない。

 今回の廃止・解体提案に感じた問題点を書きたい。この種の問題はネットだと若林亜紀さんのところが詳しいだろう。まだ何も書いてないようだが(http://wakabayashi.way-nifty.com/)期待したい。

 日経によるとこの案で僕が一番注意しているのは、「職業能力開発総合大学校」である。これを案では廃止か学校法人化して民営化とある。廃止は結構なのだが、この学校法人化はくせものである。厚労省の「領土」としてあたかも同省の一部局として活用される可能性があるだろう。例えば人事上の配置のパイプとしの利用である。

 例えば政策研究大学院大学や(このブログで存続を問題視している)労働政策研究・研修機構などが厚労省の事実上の「人事の領土」であることは明白である。かって池田氏http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuoに批判されたとある人物がかってどこにい、そしてどこを中継(本省)を経て、そしていまどこにいるのかをみれば、それらの組織に対する厚労省の影響力は一目瞭然である。僕は最近たまたまはてなのリンクにその人物のコメント欄で、こっそりとしたリフレ批判(これ自体はどうでもいい、騒ぐだけ騒げばいいだろう)が書かれていることに気がつき、その人物がそもそもの大学にいないことにようやく気がついた。その人物がこっそりと?騒がなければこの厚労省の「領土」問題に僕はまったく気が付きもしなかっただろう。

 そして中途半端な学校法人化はこのケースからも「職業能力開発総合大学校」をあたかも「研究は大事」「文化は大事」「教育は大事」などという美辞麗句だけで存続せしめ、ただの厚労省役人のまさに「天下り」先あるいは給与のはけ口としてだけ機能させてしまうだろう。そんなバカなことが許容されないように完全廃止を求めたい。