伊藤隆敏「原油・食料の高騰と経済対策」

 今日発売の『週刊東洋経済』の「経済を見る眼」。正直、よくわからない発言が冒頭にある。基本的な認識は、ここ一両日に紹介した上野、田中岡田論説と変わらない。その一方で、「では、経済政策としてなにをなすべきか。財政・金融政策で景気刺激を試みればインフレ率は確実に上昇する。一方、供給制約があるので生産量が増大するかわからない」とある。だが、日本はいま供給制約に直面しているのだろうか?

 他方で、「逆にインフレ率の上昇を阻止すべく金融引締めを行えば確実に投資や住宅需要を減退させ、さらに景気は悪くなる」とある。もしそうだとするならば、「さらに」景気が悪いというならば、現状も景気が悪い=供給制約に直面していない、と考えるほうが正しいのではなだろうか?

 この伊藤先生の論説では、不適切な政策がいくつか列挙されている。

1 賃金や年金に物価上昇分を転嫁すること

2 規制や価格連動型補助金

3 資材価格を理由にした公共事業費の拡大

 これについて、1は僕には微妙に思える。いまの現状が第一次石油ショックと同じ状況かといえば、明らかにノーだろう。第一次石油ショックの前に、経済は過熱状況であったし、さらに春闘などでの賃上げも急激であった。しかしいまの日本ではむしろ「懐が淋しい」ことが、先の岡田論説や、以前に紹介した若田部論説でも問題なのではないだろうか? なお、http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe082/rnen.pdfをみれば、若田部論説が書かれた時期よりもさらに懐が淋しくなっているわけだが……。

 2と3については異論はない。

 後段の中長期的に望ましい政策については、まあ、皆さんに読んでいただくことで略したい。