第29回石橋湛山賞(原田泰『日本国の原則』)

 原田泰さんの『日本国の原則』が、今年の第29回石橋湛山賞を受賞されました。おめでとうございます。原田さんの主張の集大成ともいえる著作でしたので、今回の受賞はまったく妥当であり、原田さんの経済学、言論への貢献を正当に評価したものだと思いました。

 野口旭さんが素晴しい書評を本書に対して、『週刊東洋経済』で書かれていましたので、そこから引用したいと思います。

:本書によれば、日本が経済的繁栄を実現させたのは、政府の経済運営が賢明であったからではなく、人々の自由があったからである。近代日本の指導者たちもまた、自由こそが繁栄の源であることをよく理解していた。
 その日本が道を誤ったのは、軍部の台頭によって、その自由が失われたからである。戦争とは本来、国民に大きな負担を強いる、利に合わない国家事業である。しかし、戦争は他方で、軍部の持つ利権を極大化させるように作用する。昭和の戦争とは、その軍部の利権追求行動の帰結にほかならないというのが、本書の中心的な考察である。
 こうした本書の主張に対しては、あの戦争にのめり込んだのは軍部よりは国民だったのではないか、当初から勝つ見込みのない対米戦争を主導した軍部がそこまで「合理的」であり得たのか、といった疑問があるかもしれない。おそらく、それらの疑問は、本書の基本的な論点には抵触しない。というのは、自由と民主主義の社会においてのみ、人々が誤りから学び、国家の政策の愚かさに気付く機会を得ることができるからである。:

 この最後の点、「自由と民主主義の社会においてのみ、人々が誤りから学び、国家の政策の愚かさに気付く機会を得ることができるからである」こそ、先日、『週刊ダイヤモンド』で若田部昌澄さんがフリードマンの『資本主義と自由』の意義のひとつとして強調されていた、誤ることの自由という論点の日本における経験として理解することができるのではないでしょうか。

 ともかく原田さんのこの著作が繰り返し読まれることを切望します。

日本国の原則―自由と民主主義を問い直す

日本国の原則―自由と民主主義を問い直す