タクシー接待とマイレージ、賄賂、そして規制の関係

 大竹文雄さんのブログ「タクシー接待http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2008/06/post_d6e2.html#commentsを面白く読ませていただいた。

: しかし、深夜まで残業することが、避けられない状況であれば、税金で賄われるタクシー代そのものは、国家公務員がタクシー接待を受けても受けなくても変わらない。運転手間の競争が、タクシー料金の値下げ競争にならず、ビールや清涼飲料水の提供という形で行われたのである。つまり、規制によってタクシー料金が値下げできないから、タクシーの運転手が実質的な値下げ競争を行ったのだ。タクシー料金がその分値下げされていたなら、国民負担は減ったはずだ。根本的な問題は、タクシーの料金規制にある。:

 僕はこのようなタクシーの料金規制がタクシー接待の「根本的な問題」なのかな、と少し疑問に思った。例えばこの「タクシー接待」はこれも去年あたり話題になった航空機を公費利用した際のマイレージの私的利用と随分似た感じである。おそらく経済的な意味づけは今回の大竹さんの議論の文脈では同一と理解できるのではないか?*1 そしてマイレージポイントをどう使うかそれは(少なくとも昨年度ぐらいの)従来まではかなり曖昧な形で運営されてきたはずだ(僕は利用したことがないのでわからないけど)。

公費によるマイレージ利用については敬天愛人落合洋司さん)の「公務出張マイレージ加算、私的使用いいの?」http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060729#1154099158が参考になります。

 ところでこの航空機の運賃に関しては僕の知識では料金規制というのはあまり聞かない。そんな料金規制はないけれども、僕は利用したことはないのでしらないが、マイレージポイントで私的消費のためのビールや清涼飲料水などのお土産に換えたり、あるいは他の私的な旅行の際にそのポイントを利用することもできるはずだ(これはタクシー接待で現金のキックバックが行われるのと同じであろう)。つまり運賃に規制がなくても「タクシー接待」がなくなるとはいえないのではないか、と疑問に思っている*2。例えば料金規制がなくても存在するような「タクシー接待」が存在するとして、それがマイレージのような形式*3だとすれば、国民負担の一層の低下にはマイレージポイントを公的な会計に加算していく手法とかが考えられないか。

 ただし航空に関しても航空運賃は料金規制がなくとも発着枠などのボトルネック施設の利用での規制が存在していてそれがマイレージポイントなどの「景品」を可能にしているかもしれない。参照:http://www5.cao.go.jp/seikatsu/koukyou/think/th07.html。でもじゃあ、この場合では、公務員のマイレージポイントの私的利用を防ぐために発着枠規制を「根本的な問題」として規制緩和すべきだろうか? 

 実は今年度、06年度での公費でのマイレージポイントの利用についての上記の議論をうけて、研究費(公費)でのマイレージポイントの利用についての扱いが各大学では以前にもまして厳格な運用になっているはずだ*4。僕は自分で利用しないのでいまはその運用細則まで知らないのだが、そういった厳格な研究費の利用は「根本的な問題」への対処ではなく、むしろ航空機会社の業務分野で規制緩和を行うのがスジである、と骨太な主張をする経済学者がいるのか見たい気もした。

 深夜残業の見直しについては僕は何もいまは意見はなくそれでいいんじゃないのかなあ、としかいえないのだが。

(参照エントリー)改革病、根本病、韓リフ氏すなどhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20071225#p2

(参照エントリー2) 賄賂とかは今回のケースはあてはまらないが、深夜残業という公共サービスの過小・過剰かどうかを考える上で、今回の「タクシー接待」やあるいは「マイレージの私的利用」が果たす役割は、この梶ピエールさんのエントリーの議論にも繋がるかな?
http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20080605/p1

*1:ところで官庁周辺に深夜いたことがないのでわからないのだが、そこを流したり主なテリトリーにしているタクシーはかなり特定の会社や個人であり、毎度の利用に対しての事実上のタクシー版マイレージポイントの蓄積としてこの接待も考えることができるかもしれない

*2:いわゆる非価格競争の存在

*3:一定の景品との引き換え権利、キックバック、無料乗車券の利用権など

*4:研究費=公費でのマイレージについての大屋さんの素朴な感想http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000336.htmlは面白い。実際に学会の出張にいくとだいたい出費の面では無駄なことをしてしまう。ここらへんは経済心理学的な課題かもしれない