白川総裁発言寸評と「学者肌」説への批判

finalventさんの「ほへぇ」という感想から興味をひかれて読んだのですが(最近、以下に簡単に書きますが総裁記者会見読む価値ゼロなのでチェックしてませんでした、すんまそ‥‥誰に謝っているのだ?)

:「資産価格が大きく上昇する中で、物価は安定している、その下での低金利の持続というものが、何がしか行き過ぎにつながっていく可能性があるのではないだろうかという時に、インフレーションターゲティングの枠組みの中で、どのように説明するのかというのが、インフレーションターゲティングを採用している国の中央銀行が悩んでいた問題の1つだった。現在起きていることは、そういう問題に加えて、供給ショックで価格が上がり、消費国の景気は下押し圧力が働いている。金融政策を説明する時に、この枠組みの下でどのように説明すべきなのかということだ。景気は短期的には交易条件の悪化から下押し、長い目でみるとその効果は消えていく。一方、物価については、第1次的には上がり、その後予想インフレ率の上昇によってどのような変化が起きるかということ。こうした景気・物価についての複雑な動きがある中で、インフレーションターゲティングという枠組みの中で金融政策を説明することはもちろん可能だが、その説明は時として難しい。時として難しいことが、結果として政策運営それ自体の難しさにもつながっていくことがありはしないかということで、最近何人かの米国の学者がこの問題を提起している」

 「いずれにせよ、インフレーションターゲティングを採用する場合でもしない場合でも、この供給ショックの下で金融政策の判断それ自体も難しく、説明自体も難しい。難しいけれども最後は判断はしなければいけないし、説明をしなければいけない。そのために、各国は置かれた枠組みの中で説明に努力をしているということだと思う」 :

 いつもの通りなんだけども

1)なにもしないよ、2)なにかするにしても外国次第だし、国内状況は、政府がいつものように景気悪化判断を遅れがち(手遅れぎみ)に出すので、それにバックワードルッキング?しておけば日銀的に問題なし(責任とらなくてもオッケイ)という伝統芸の採用、3)インタゲは採用しないよ、採用しない理由はいくらでもあるよ、勉強苦手な学生が勉強しないって理由をいくつもでっちあげられるのと同じで。

 と、これだけ簡単に寸評しておけば十分でしょう。全然この感想変わらないので総裁記者会見を読んでそこに内部者だけの精緻な違いを発見する作業は国民的に意味ないので省略してます、私。

 それと白川総裁は「学者肌」なので理論から納得すれば大胆な政策転換あるかも、というお勉強好きな人たちのどうしようもないスジ悪の見方があります。本当にどうしてそんな希望観測がもてるのかなあ。白川総裁はかってゼロ金利解除時に、わざわざ国会の答弁で、金利収入の損失を声高く説明したかたですし、この実績だけでも理論よりも組織に殉ずる方なことは十分明らかです。この種の希望観測をもつ人は本当に猛省したほうがいいと思いますけどね。それに本当に「学者肌」だったら参考文献に自分と異なる見解でも代表的なものはリファーしますよ。むしろ自説の貢献を強調するためには自分と違う見解似た見解を積極的に紹介しそれを批判的検討するのが「学者肌」じゃないだろうか?*1 。簡単にいえばサーベイきちんと「学者肌」ならするでしょう。残念ながら白川総裁の『現代の金融政策』にはそんな作業は完全にというほどすっとばされてるので、そもそも本当の「学者肌」なのかさえ僕には疑わしい。
 
 本当に不幸な国に生まれました。

*1:僕の啓蒙書でさえ異説のオンパレードともとれる 笑