ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』(間宮訳・下巻)


 遅滞なく下巻が出る。宇沢弘文氏が解題を書いているのには驚いた。いまや岩波書店の経済関係の刊行物には大して期待はしていないものの、例えば大瀧雅之さんや小野善康さんに依頼するなどの提案はなかったのだろうか。間宮氏があとがきにかえた第二の解題みたいなのを書いているが、まさに抱き合わせ販売の典型みたいな所業だろう。現時点でベストな翻訳者は、上下巻に分けて日本ならば明らかに(国際的なケインズ研究のリーダーである)平井俊顕先生(上巻の訳者あとがきも執筆)だし、解題には小野善康氏の“新古典派”的なケインズ解釈と、クルーグマンケインズ論の翻訳を山形浩生訳で載せてしまってもいいだろう。それぐらいの遊び心が微塵も感じられない編集の無策ぶりに「泣いた」。


雇用、利子および貨幣の一般理論〈下〉 (岩波文庫)

雇用、利子および貨幣の一般理論〈下〉 (岩波文庫)