竹中平蔵氏「日銀が今後20年、金融政策に失敗し続けることを前提に増税を求めている。国民はもっと怒るべきだ」


 http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20071028ib21.htm


 この種の試算をしたことがある政府関係者には絶対に既知のことであるはずだけれども、名目成長率を少なくとも3%以上見積もらないと満足な財政再建シナリオが組めないのは明白なはず。いいかえると消費税増税を織り込むことを前提にわざわざ3%程度の名目成長率を無視(=竹中氏のいう日銀の政策失敗をあえて前提)しないとこのような試算はできないのです。かなり悪質な増税目的あっての試算ということで、担当者とその管轄責任者そして提案者は国民を大きく裏切る行為をしていると思います。


さらに注目すべきは、財務省主導で増税路線が提起されるのは、ほぼ「改革」=歳出削減を含む公務員改革などの事実上の棚上げや、また経済の減速局面が近いかその最中のときであることが多いことですね。今回も状況的にはそのようです。これについては異論もあるでしょうが、政治経済的にはいま柴田弘文仮説を応用すると理解できる部分もありますね。


とある本の草稿から引用
:福田政権になってから最近の消費税増税議論の高まりと改革の後退がどうもリンクしているのではないか、と思われることだ。この点をみるのに便利な仮説に、国際的に著名な公共経済学者の柴田弘文氏が提出したものがある。柴田氏によれば、財務省はしばしば不況時に緊縮財政を採用しているという。財務省の予算編成権限に影響をもつ官僚たちは、できるだけ自由裁量的な予算を獲得しようとする。その理由は将来の天下り先への影響や財務省の省庁間での優位性の獲得などの省益に由来する。だが不況になると税収減などで予算総額が圧縮されるため、そのような自由裁量的予算の確保が難しくなる。しかも国債発行の増額への要求が高まるかもしれない。しかし予算編成の権限者たちは、そのような要求は省益を長期的に損ねるもとの映る。なぜなら国債は将来返済しなくてはいけない「固定費」であり、これは将来的な財務省の自由裁量的予算の幅を好不況に関係なく圧縮するからである。したがって不況の色彩が強まれば強まるほど、将来的な権力の喪失を回避するために財務省国債の発行に慎重になり、緊縮型の財政を目指すことになる。
この柴田仮説を現状にあてはめてみよう。まず政府部内におけるいわゆる「財政再建派」というわれる人たちが、政権の中で大きい影響力を持っていることはほぼ明らかである。彼らの至上命題は消費税増税である。これは予算総額を拡大する方向に寄与するため予算編成の自由度を将来的に増す方向に寄与する。ここで注意点は消費税増税社会保障目的に限定するという言質をなかなか官僚側が与えないこともこの自由裁量の魅力を語っている。他方で名目成長率を上昇させる政策も税収増に結び付くという見方があるが、「財政再建派」はそのような見方を「悪魔」的と否定している。その財務省的な理由としては、名目成長率が上昇すれば国債の利払い費が膨張し、柴田仮説にあるように「固定費」がかさむことで自由裁量権がそれだけ喪失すると考えるからであろう。さらに天下り規制の事実上の骨抜きも彼らの省益確保からいえば当然の選択になる。
現状の日本では、先行きの経済が不透明であるが、その不透明度が増すとともに、実際には増税の合唱と「改革」先送りの通奏低音が鳴り響くだろう。: