竹中平蔵とジョセフ・スティグリッツを足して二で割れ!

 とでもいいたくなる今週の『週刊東洋経済』です。


 竹中氏の民営化大好き論はもう勝手にやっていただいて(例えば東大が民営化すると世界ランキングがあがる、という竹中氏が考える理由がなんなのか皆目わからず。民営である慶応早稲田が東大、京大という独立行政法人陣の後塵に甘んじている状況はいったいなんなのだと?)、マクロ経済政策については実に適確な指摘をしています。


 まず政府の06年度までのデフレ脱却と2.0%の(竹中氏自身が招いた最大の過誤だと思う低すぎる名目成長率目標)名目成長率実現の公約がなぜ実現されないのか、それを誰も日銀に追及することをしていない、と。


 「日本銀行は最強の中央銀行です。何をやっても責任をとらない」とばっさり。日銀法を改正すべきだと明言しています。


 それと人口減少や高齢化などにそなえての移民政策を竹中氏は提案していますが、これは僕は反対です。あとあいかわらず郵政民営化の「波及効果」を語るなど、郵政民営化万能論とでもいいたい話題がお好きのようですね。また農業部門への政府の「底上げ戦略」=所得移転政策を「おれたちは生産性が低いんだから、おまえたちも生産性を低くして、みんな泥舟で沈んでいこう」というものだと手厳しく批判しています。


 これはスティグリッツの発言の方がより適確ですのでそちらを引用しておきます。


 「日本の保護主義の真の問題は、日本が個人としての勤労者を保護するのではなく、多岐にわたる脆弱な産業を保護していることにある。日本の課題は、効率の高い製造部門とその他の部門との間の格差だ。日本は、競争を促す規制をより導入すべきであり、競争を妨げる規制をより緩和する必要がある」。


 スティグリッツ小泉政権の成長重視政策に一定の評価を与えています(これは少し意外でした)が、生活の質の改善のための所得政策も重視すべきだ、といっています。


 これはスティグリッツの提唱する税の累進性の強化、完全雇用による最下層の人の救済、勤労所得控除、労働組合の弱体化防止の法制化、税引き所得の再分配最低賃金制度など多岐にわたりますが(ついでにいえばナショナルミニマム概念の日本でのいたずらな混乱 経済学者の貢献がこの点で不幸にして大です)、これらを僕は竹中氏らと異なり全否定的にとらえることはできません。愚直のようですが、古典的な「効率と平等のトレードオフ」としてこの問題に臨みたいと思っています。


 またスティグリッツ郵政民営化について「小泉氏は、これを日本の経済や社会にとって根本的な問題だと考えているようだが、私はそうは思わない。郵政民営化を大きな争点にしたことによって、より根本的な問題から目をそらすことになった」という視点はとても共感します、教授!。