スティグリッツのウォルフォウィッツ世界銀行総裁問題への発言


 下のエントリーで久しぶりにスティグリッツのHPをみたらいくつかウォルフォウィッツ問題(wikipedia参照)で発言しているようなので内容を簡単にご紹介。ここ(pdf)ここここ(pdf)


1 アメリカが世界銀行、ヨーロッパがIMFのトップを割り振って決める慣習を廃止して、民主的なトップの選択と組織の統治を行うべし(現総裁の身内をひきつれた人事政策も当然問題)


2 ウォルフォウィッツ総裁が手がけている反汚職キャンペーンの意義は高いが、これを理由のひとつにして開発援助を削減したりするのは好ましくない。効果的な援助のほうが、汚職への攻撃よりもよほど必要とされている。


3 アメリカは経済規模に見合った国際援助を行っていない。またイラク戦争のコストがはるかに国際援助の額を上回っている


4 ガヴァナンスの悪い国(バングラデシュなど)への援助をうまく行う経済モデルはいまのところ存在しない。しかしだからといって一概にガヴァナンスの悪い国への援助を削減するべきではない。バングラデシュでは有力なNGOが存在していて、この機関を利用して効率的な援助は可能。いろいろ試行錯誤すればいい


5 世界銀行IMF発展途上国に極端な民営化をすすめたり、マクロ政策もインフレ率だけにしぼるように処方するが、これは誤り(この点については下記の当ブログの諸エントリー参照)。


6 国際援助の資金をファイナンスするいくつもの革新的な手法がある。例えば水産資源の漁獲権を国際的に管理してこの権利を市場を通じて売買し、その売買益を国際援助に利用する。または負の外部性への課税から得た資金を国際援助に利用する、など


7 ウォルフォウィッツを追い出すことは、世界銀行の意義、国際援助の意義を再確認する好機になる


 論旨はいままでのスティグリッツの邦訳もある一連の著作の延長上ですが、明瞭で説得的なものだと思います。

(補)ちょうど前国務副長官のロバート・ゼーリックが次期世銀総裁指名との報道。結局、スティグリッツの1は踏襲した模様。ところでこのエントリー書いてるうちに思い出すかな、と期待してたんだけど(それがこのエントリー書いた動機なのは内緒ですw)、ネオコンの経済学っていう題名のいかにもな本があったはずなんだけど正確な題名が思い出せない(ーー;)


 なお当ブログのスティグリッツ関連は、


・ジョセフ・スティグリッツ+アンドリュー・チャールトン『フェアトレード』
・スティグリッツ『月刊現代』4月号インタビュー
・書評『世界に格差をバラまくグローバリズムを正す』
・スティグリッツの制約されたグローバリズム
・ノーガード経済論戦