『フィナンシャル・タイムズ』日本銀行政策関連社説(邦訳版)


 finalventさん経由

http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20070225-01.html


 まるで自分が書いたみたいな錯覚にさえ陥る(笑い)記事ですね。このブログでもとりあげた論点であるいわゆる「リーク問題」に言及した今回のケースでは最初のメディアです。やはり外国メディアでしかこれはとりあげないでしょうね。


< 残念なことに、日銀の福井俊彦総裁が追加利上げを提案したという情報が、会合開催中にリークされ、報道されてしまった。日銀の政策決定プロセスは極秘のはずだが、このところ数カ月にわたり、こうしたリークが相次いでいる。このような規律のゆるみに加えて、日銀の公式発表が示す方向感は頼りない。おかげで日銀の政策決定はしっかりしたまとまりのないものに見えてしまい、市場の不安感が高まる。>


 また金融政策なのに構造改革を目的にしているという倒錯については言及してはいませんが、これは単にそんなものは目的とすらならないただの恣意的な言い訳ですから以下の記述で十分ともいえましょうか。

< 結局のところ日銀は、自分たちが「正常」と考える水準まで金利をできるだけ早く戻さなくてはならないと、断固たる決意を固めている——今回の利上げで、そういう印象を改めて抱いた。しかしながら、原油価格を差し引いた物価上昇率がマイナスであり続ける以上(ほかの先進国経済と同様)、どんな機会をとらえてでも何としても緊縮的な金融政策を実施しようとする姿勢を支える理由付けは、説得力に乏しい。>(赤字は田中)。


 要するに「上げるために上げた」わけです。こんな単純な子どもの話めいた理屈が一国の最高権力のひとつによって弄されているわけです。そして政治家や一部の批判勢力がその恣意性を批判すれば、「日本銀行の独立性を損ねる」と総出で批判をするわけです。


 こういう態度って、戦前の日本の軍隊への批判を「統帥権に口出しするのはなんたることか!」とベタで切って捨てるのと同じことです。自分たちの政策評価への批判をなんらかの超越的な領域から批判することで官僚的な利益を掠めて、どんどん泥沼に入り込んでいく。それを応援する国内の大マスコミの支援と、まったく戦前と変わりませんね。


 もっとも同誌の記事が海外経済誌の主要論調ではないのも要注意点です。『エコノミスト』誌などは日本銀行の政策に理解を示しているようにも思えます。その点は「円キャリートレード」論の影響かも。