ニート利権のメモ(1)


ニート利権」という言葉はともかく、この種の指摘ってWikipediaが書いているような本田由紀さんたちよりも、むしろ山形浩生さんの「ニート様に税金を使うのかよ、ゴリャア」という趣旨の発言が先駆(SIGHTのブックガイド2004)で、それに追随する形で他の人たちがでてきたように思うのだが……。後の歴史家はそこらへんきちんと押さえておいてねw


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%88%E5%88%A9%E6%A8%A9


 それと上記wikipediaに書いてある「私のしごと館」批判については、これは関西在住の企業家Kさんがこれらの施設の非効率的な利用と能書き(若者の雇用対策とかなんとか)の問題に気が付いて、京都の「私のしごと館」に猪瀬直樹さんを案内したわけで、これも2004年の後半の話。猪瀬さんはその後、この問題を「ニュースの考古学」で書いている。


 ここから割りと重要だと思うことを書くけど、猪瀬さんは雇用能力開発機構批判を2000年以降強めていたわけで(メールマガジン「日本国の研究」の2001年版を収録したPHPの書籍に収録、僕の論考もある)、彼の「私のしごと館」批判はその延長上の関心。


 僕の「ニート」利権批判もルーツは同じ。例えば2002年に出た拙著『日本型サラリーマンは復活する』を見ていただければ同機構の機能への懐疑と、構造的だと思われているのも実は循環的な問題なのでマクロ経済政策の方が有効だよ、とする後の「ニート」批判の視座と相似形。ここらへんは昭和恐慌研究会とか猪瀬メールマガジンのメンバー、特に野口旭さんや原田泰さんあたりからの影響が大きいはず。


 つまり「ニート利権」批判というのは、従来の労働政策とその施設を批判するふたつの流れ、


(1)猪瀬直樹さん的な構造改革的視点ー民間でできるものは民間へ、


(2)野口旭さん(加えて不肖田中や原田さん)的発想ー構造的な問題じゃなく実は偽装された構造問題なのでマクロ経済政策の方が有効 


というふたつが前提にあって、玄田有史氏の「ニート」論の誕生をうけて、それに触発された2004年の山形さんの発言によって上記ふたつの批判の流れが「ニート」利権・「ニート」概念の乱用批判に結び付いた、というのが僕からみた流れなんすよ。


 以上の流れはすでに04年段階では完成していて、ちょっと本田さんの論説の流れが完全にフォローできてないけれども、内藤朝雄さんも後藤和智さんたちもほぼ05年(それも後半)からその活動は本格化しているので、どうも「ニート利権」のネーミング(このネーミング自体もメディアレベルではもっと早いかも?)だけでこの種の問題意識とその守備範囲を本田チームにのみ帰属させるのは、なじめないんだよなあ。それに上記のふたつの流れを受け継いでいるようには本田さんたちの問題意識は思えないので、その点でもね。つうかこのふたつの流れがある意味でオメガでありアルファなんだけどね。


 その意味で、このwikipediaはちょっといただけない。