経済学のパラダイム転換にむけて


 「経済学のパラダイム転換」というすごいタイトルをつけたもんですなあ 笑)。というか「パラダイム」自体が懐かしいわけで、経済学でも乱用されてました70年代から80年代にかけて。で、この言葉を愛好した人たちが好んでいたスタンスは、本当のパラダイム転換だったルーカス批判*1を一切無視して、強引に合理的期待形成とラディカルズ(あるいはジャパン・ケインジアン)との対立に持ち込んで、それに左翼右翼の政治対立まで装飾してくれましたっけ。

 代表的な作品としては佐和隆光『経済学とは何だろうか』、宇沢弘文近代経済学の再検討』など。

前者は、合理的期待「学派」をこう総括しています。以下の引用の「ケインズ批判」や「政治的保守化」というのは合理的期待「学派」の主張の代理商標です。


「実際、昨今の「ケインズ批判が、ケインズ理論をデータによって「反証」した挙句のものでないことは、言うまでもない。政治的保守化という時代的文脈の一大変化が、ケインズ理論のリアリティーを低下させたーーすなわちケインズの理論体系が色あせて見えるようにしむけたーーにすぎないのである」(188頁)。


 佐和氏が合理的期待のルーカス批判に代表されるようなどう転がってみても実証の問題を、政治的な立場に変容させて日本で宣伝した事実はさまざまな悪影響を日本の言論の場にもたらしたといえる。

 ところで話はこの佐和氏の本がでたほぼ10年後に、大学院に入った私からすると、合理的期待の成果をケインズ経済学が吸収しているのはギブンであったが、その当時(いまから10年以上前)、「これはやりすぎじゃねえの? 現実とどう関連してんのよ?」と思っていた状態空間の時系列分析*2や動学的な分析が、いまや「リアリティー」の問題として自分に迫ってきているのですが 笑。

「リアリティー」を忘れなければ貪欲になんでも吸収汁というのが結論でしょうね。

 というわけで前置き長いなw。明日、アマゾンに注文したのがようやく来るのですが、以下の本は掛値なしのパラダイム転換への道しるべです。必読


誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

*1:ルーカス批判については矢野さんのエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20060806とyyasudaさんの一連のエントリーhttp://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50031902.htmlを参照してください。文献的には簡単な解説程度ならば90年代以降の米国のマクロ経済学の標準テキストにはそれなりの説明がありますが、yyasudaさんたちのエントリーと類似の例で、ご本家のサージェントの『合理的期待とインフレーション』の冒頭の論説を読まれてはいかがでしょうか?

*2:状態空間の時系列分析についても矢野さんのエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20050402を参照してください