吉祥寺のバウスシアターにて深夜上映。吉祥寺は自宅からも夜いけば近いのでここで非ブロックバスター系の映画をやってくれるのは非常に助かりますね。というわけで一時期は日本で公開されないかもしれないと思いDVDの購入を考えた『太陽』。観客の年齢層はやはり非常に高い。
同じ指導者の戦争末期の生活を描いた『ヒトラー 最後の12日間』とはまったく異なる視点(『太陽』の方は敗戦後の生活も描かれている)。リアルな東京の廃墟と幻想的な爆撃シーンや絶え間なく聞こえる航空機の音や機械音などが戦争を予感させる以外は、昭和天皇の内的な側面に絞って創作している。映像の作りこみがすごく、引き込まれる。ラストシーン近くのイッセー尾形(昭和天皇)と桃井かおり(皇后)とのやりとりや、その直後の侍従(佐野史郎)とのからみは圧巻。特に桃井かおりのあの目は迫力がある。ソクーロフのほかの作品も見たくなってきた。評価☆☆☆☆1/2

- 作者: アレクサンドルソクーロフ,Aleksander Sokurov
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2006/07/26
- メディア: 単行本
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映画館で『映画『太陽』オフィシャルブック 』を購入していま読んでいるけれどもソクーロフのインタビュー(沼野充義聞き手)が非常に面白かった。ソクーロフが昭和天皇の人間性やその政治的・歴史的な役割をどう解釈しているか、日本への暖かいまなざしとともにわかりやすい。このインタビューはこの映画に関心がある人は必読。それと本書には西部邁氏が最後の対談にでてきてソクーロフの天皇観に冷水を浴びせてたり、いくつかの日本人にはおなじみの典型的な市民社会的理解もでてきたり、と多様な意見がバランスよく収録されていて、これは読み応えあり。おススメ。
(補遺) 汗かき親父さんの情報で福田和也氏の『週刊新潮』の『太陽』評を読む。予想通りに酷評w。本筋からずれるが僕は福田和也氏の書いたもの読んだのこれが二回目かな?(正確には書いたというよりもしゃべったのを立ち読みして呆れた。これねw。立ち読みの記憶では申し訳ないのでそのうちまとめて何か書くかな(書くほどのことでもないが)。
さて本筋に戻すと映画の評価としてみたときに福田評は参考になる。特にソクーロフが昭和天皇を「神」として描くことに失敗しているというのがおそらくこの評論の趣旨なんだろうが、それはこの作品を考慮すべきひとつの重要な論点でしょうね。
福田氏の論点に関連するソクーロフの発言を上の『太陽』本から引用しておきます。
「天皇の「人間宣言について言えば、これは複雑な問題ですが、私は天皇が本当のところでは神格を放棄したとは考えていません。なぜなら、天皇の神聖さは天皇自身が自分から身にまとったものではなく、歴史の流れの中で形成されてきたものであって、天皇自身が放棄できるものではないのです。天皇が「人間宣言」したからといって、日本人の国民生活を、精神的にも、政治的にも変えたわけではありません」(31頁)。
あと『太陽』は見なくてい、はさすがに書きすぎ。そんなに悪い映画じゃないよ。頭に何か一物あればw 怒るのもよし感涙にむせぶのもよし。