中原伸之氏の石油の経済学


 最近、石油関係に関心がでてきたので、まずは中原氏の『日銀はだれのものか』から石油関連の主張をメモ。少しまとめて関連文献を漁る方針。

 原油高の意味を中原は需給両面の構造的要因でとらえる(おまけの地政学的リスク)。構造的要因は、需要・供給の価格弾力性が低いこと(石油の代替物が事実上ないこと)とも表現できる。

 1 需要面の構造的要因とは、人口増、世界的なモータリゼーション化、石油消費の抑制が困難になってきたこと。


 2 供給面の構造的要因とは、新規発見油田の減少(60年代は新規発見油田は年間400億バレル、2002,3年は100億バレルへ)、既存油田の枯渇(ピークオイル・セオリー:世界全体の原油生産量がピークを過ぎた仮説)。

 中原はこのピークオイル・セオリーを本書では大きくとりあげる。「問題の核心のひとつは、それがいかに時間的に早く、かつどれだけの量で、実際に生産されるかということです」、「石油生産のピークが来ることと、石油がなくなることは全く違う」。

 メジャーは可採埋蔵油田への新規投資をあまり行っていない。既存の確認在庫を発掘するのに専念。
 「メジャーは企業全体のキャッシュフローが潤沢なために、配当で支払う額と自社株の買戻しで使う金額の合計額が、探査・掘削の投資額をはるかに上回っています。 略 実際ROE、ROIなどが高い油田の候補地が減少」、つまりメジャーは投資のカットオフ・レートが高い。