緊急経済対策の“真水”推理:日本経済新聞などから

緊急経済対策の事業規模は総額108兆円程度だが、今日閣議決定されるが、現時点で日経が出してる記事が正しいと前提して考えてみる。


緊急経済対策、迅速さカギ 給付遅れれば影響深刻:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57721290W0A400C2EA1000/

 

基本的な発想は、IMFの二段階にわけた政策対応を採用している。日経の報道では、「緊急支援フェーズ」と「V字回復フェーズ」と呼ばれるものだ。総額は事業規模で108兆円で、これはGDPの約二割である。この数字は、主要20カ国・地域(G20)が3月26日に、テレビ電話会議を開催し、総額5兆ドル(約550兆円)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を行うとしたものの、“国際公約”な負担を意識してのものだろう。GDP比でいうとドイツもまた約2割の財政出動を行う。

 

事業規模自体は108兆円だが、問題は実際にGDPを押し上げる経済効果に貢献できる部分である。いわゆる“真水”といわれる部分だ。真水の定義は、正式なものはない。高橋洋一嘉悦大学教授は、以下のように整理している。「経済対策には、大別すれば(1)公共事業、(2)減税・給付金、(3)融資・保証がある。「真水」とは、(1)のうち用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分、(2)は全額、(3)は含めないで、(1)(2)を合算したものを指すことが多い」。簡単にいうと付加価値の総額を押し上げる政府部門からのおカネの流れを意味している。事業費を繰り入れると二重計算になるので引き算する、また融資は扱いが微妙だ。極めて低い金利(もしくはゼロ金利やマイナス金利!)での融資は経済を押し上げる可能性はある。保証もこれは設計次第で、雇用調整助成金は、雇用保証としての機能を果たすだろう。

 

この真水解釈をそのまま今回の緊急経済政策に当てはめてみると、「減収・低所得者層への給付金30万円」は真水に入る。また中小企業向けの給付金(最大200万円)、そして個人業者やフリーランスへの給付金(最大100万円)も真水の部分に入る。総額の予算規模は記事からは不明である。50万から100万件の給付を想定しているとあるので、最大値の平均をとり、150万円に100万をかけると、最大で1兆5000億円程度。中小企業の最大給付金に100万件をかけても2兆円程度である。

これらの世帯、事業者、企業への給付金が総額6兆円になる。

 

児童手当(一律、申請不要、15歳まで)の一万円増額も入る。児童手当の一律増額は評価される点のひとつでもある。児童手当ももちろん真水である。児童手当は約1兆4千万円ほどの予算だったので、単純にこの倍とみなすと、真水への貢献は1兆4千万円になる。実際の総額は記事ベースでは不明だが、そのうちわかるだろう。

 

記事に掲載されていないが、大きな金額としては、中小企業に納税や社会保険料の支払いを延滞金なく一年間「猶予」するための予算で約26兆円がある。ただしこれは猶予なので真水にはいれない。

 

雇用調整助成金の補助率の引き上げと非正規雇用も対象にした点も雇用の緊急的維持の点で評価すべきところだ。これも真水に今回はいれるべきだろう。

 

「厳しい経営環境にある中小事業者等に対して、令和3年度課税の1 年分に限り、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画 税の負担を2分の1又はゼロとする」というのが決定された文書の一部だと知人がSNSで教えてくれた。また中小企業が設備投資に関わる固定資産税も同様に減免の対象だ。この情報が正しいとすると、総額はどのくらいだろうか。中小企業ならば軒並み適用されるのか、どうかも不明だ。ちなみに中小企業が生産性革命に貢献する設備投資に関わる云々はすでに政策として採用されているものを拡充・延長とあるが、すでに地方自治体レベルは9割が特例率0(つまり税免除)なので実際の効果はマクロ的には無視していい。いずれにせよ固定資産税のうち償却資産対象は1兆6千億円、家屋は3兆9千億円、また都市計画税は1兆2千7百億円が直近の税収である。これらは地方の重要な税収項目だが、それの減免部分を国が補うという。問題はその総額だが、いまの報道段階では不明である。仮に償却資産と都市計画税の半分を減免対象としておこう。すると1兆4千億程度である。

 

その他にもお肉券などはなかったものの各種農業団体への補助金があるが、それもどこかからの流用か、民間資金の活用か、なんなのか実体は正式案が公表されてから検証したい。

 

まとめると以下のようになる。予想金額なので、実際は今日にも判明する正式案をみて追記で入れ込んでみたい。

 

真水分類:金額は上記の推理に基づくもので実際の額は後日追記。

「減収・低所得者層への給付金30万円」、中小企業向け・個人業者やフリーランスへの給付金 総額6兆え

児童手当 1兆4千億

雇用調整助成金の拡充 不明

中小企業の固定資産税・都市計画税の減免 1兆4千億程度。

 

上記でもかなり過大に推理していると思うが、真水の予想値は8兆8千億円程度である。日本のGDPギャップの落ち込みを解消する推計はいろいろでているが、僕の楽観的?な推計でも総需要支援には12兆円は必要であった。他にも20兆円とか30兆円とかいわれている。

 

ただ国債発行で16兆円を調達するという。これと真水部分との関係は不明。

 

緊急対策なので感染症が終われば、経済を通常のようにブーストをかけるという主張をみるが、数兆円から多いときは十数兆、二十数兆円の総需要支援不足のまま、この終わりがなかなかみえない新型コロナウィルスの感染時期をのりこえていくつもりである。しかも上記の財政支出は、個人向け給付金をとっても時間がかなりかかりそうである。五月から給付を開始しても夏までかかるという。あまりに遅い。

 

何度も強調するが、これは実際にはラジオ番組に出てそこで対策について語るための素材=推理である。実際にはまもなく案がでてより具体的な金額がわかるだろう。ただ推理の方向性はそんなに間違ってはいないと信じている。

 

スピードも総額も不十分だということは少なくともいえる。