日本の対韓国輸出管理問題の一部緩和は「優遇措置の復活」でもなんでもない

日本が韓国に対する輸出管理を一部緩和した。具体的には、レジストを特定包括許可との対象としただけである。これを日韓首脳外交の「お土産」ととらえるむきがあるが、細川昌彦中部大学特任教授はさっそくTwitterで以下のように注意を与えている。

 

要するに韓国との対話の成果ではなく、あくまでも日本政府が日本企業の実績に注目しての見直しということである。なお輸出管理自体は国際的な安全保障の枠組み(一例として、ワッセナーアレンジメント 

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/wa/index.html

)の中で、日本が責任をもって行う政策的対応だろう。外国が関係するとはいえ、本来は日本の「内政」問題といえる。 

 

 ここで輸出管理問題のおさらいをしておこう。以下はいままで書いた論説を利用している。

 

対外的な取引には主にふたつの面がある。ひとつは経済的な貿易面、そしてもうひとつは安全保障面の交渉である。輸出管理問題はこの貿易面と安全保障面の接点に位置する話題である。核兵器開発などの大量破壊兵器の開発、または通常兵器に利用される可能性の高い輸出案件についての問題が、今回の「輸出管理問題」のすべてである。この領域にかかわる財の数量はきわめて限定的である。


 細川昌彦中部大学特任教授は、先行して行われた半導体などの原材料となる三品目(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素)の日本への依存度は高いものの、今回の管理強化で対象となるのはごくわずかであると指摘している。細川氏は一例として、「許可の対象は日本供給のレジストのうちたった0.1%で、新製品の試作段階のもの。半導体の量産品に使われるものは許可不要」https://twitter.com/mHosokawa/status/1160897880137162752twitterやテレビ番組で説明している。このうち今回はレジストについての対応が行われたわけである。


経済的な効果の観点からは、韓国の半導体産業や国際的なサプライチェーンの脅威になることはあり得ない。もちろん「禁輸」でもなく、またすべての品目でいちいち個別許可が必要という話でもない。今回の輸出管理については、一般財団法人安全保障貿易情報貿易センターの解説が参考になるhttp://www.cistec.or.jp/service/kankoku/190805setumeishiryo.pdf


もっとざっくりした言い方をすれば、本当に危ない事例だけを管理したいだけの話である。韓国がテロ支援国家でもなければ大きな経済問題になりえない水準なのだ。日本政府がそもそも懸念しているいくつかの例での懸念さえ払拭されればいいだけの話を、自ら日本政府の信頼を損ねる対応を重ねてしまうという政策の失敗で、ホワイト国から外されたのである。まずは韓国政府は自らの輸出管理の不備をただすことが最優先なのだ。

 

さらにこの問題を依然として、元徴用工問題の「報復措置」として日本の外交の矛盾ととらえる人たちが専門家にもいる。これもまだ言ってるのか、というレベルだろう。政府間の話としては、大枠の背景にはあるかもしれないが、それを全面に出しての問題対処ではないことは自明だろう。もし本当に報復措置をするならば、より本格的なものが必要とされなければならない。

 

なお日韓首脳会談を前に、例の文議長の日韓共同ファンド案がまたでてきて、そこでは日本側の「謝罪」ありきが前提になっている。

韓国国会議長「法案は日本の謝罪が前提」 首脳会談で再確認を | 聯合ニュース

無限の外交上の謝罪ゲームを継続するとんでもない政策であり、日本の未来の世代を政治的・精神的な奴隷とするものではないだろうか。国内では日韓議連の一部で同調する無責任な声があるが、取り合わないことがいままでの日本外交の姿勢とも矛盾せず、また将来的な日本国民の利益に適合するだろう。