消費増税は前回以上の衝撃か、マッチポンプではない対策を急げ

消費増税前では、政府側は「消費税の駆け込み需要はあまりなく、それゆえ反動減も少ないのではないか」という楽観的なものだった。むしろ世界経済の不安定度が高まり、すでに景気が下降していて、消費に力強さがないところで増税するため、駆け込み需要自体が起こりずらいのではないか、という悲観もあった。

 

消費支出の対前年同月実質増減率の推移(二人以上の世帯)でみると消費支出は増税前は9.5%増で、10月はマイナス5.1%に落ち込みだった。つまり前回ほどではないが駆け込み需要があり、さらに前回とほぼ同じだけ反動減があったということだ。

 

しかしこの対前年比だけを比較してももちろんダメだろう。まず前回に比べて税率の引き上げが少ないにも関わらず消費税の反動減が同じだったことだ。これは増税前から指摘してきたが、消費の先行きへの悲観の度合いが、前回の引き上げ時とは比べ物にならない状態で消費増税を実施したことの影響がでているのだろう。

またさらに政府は軽減税率、ポイント還元など消費増税対策のシフトを採用してもこの結果だった。これは想像以上のマイナスのショックが起きたということだろう。

以下の図は統計局から。

 

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当たり前だが、景気の下降局面で、従来から日本経済に打撃を与えることが経験上明白な増税をすれば、少なくとも消費に直撃することは言をまたず明瞭である。そして政府は今回もマッチポンプ的な財政支出を構築しようとしている。これはしないよりするほうが格段にいい。だが、本来はこの積極的な財政政策は少なくとも年度初めには行うべき規模のものだった。なんにせよ、デフレを脱していなかったからだ。だが政府の景気予測はいまも楽観的な状態のままでそれが冒頭の発言のベースにもなり積極的なアクションを逃してしまった。

 

おさらいで昨日のスクーでも話した現在の経済の見通しを一枚のスライドにしてみた。

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金融政策は積極的緩和姿勢である。名目金利だけに注目するのではなく、実質金利コントロールに注目すべきだ。そしてこの観点から財政政策を積極的にサポートできる。もちろんまだ緩和の余地があるのでその方向も模索すべきだ。

 

あくまで現状の金融緩和の範囲で、原田泰日銀審議委員が以下のように発言したらしい。それはいまの緩和の枠組みの中であるならば妥当である。

原田日銀委員、政府が経済対策でも日銀は追加緩和考える必要ない - Bloomberg

なんとなくこの記事の見出しだと日銀は「なにもしない」という印象さえ与えるが、実際はいまの金融緩和のスキームで今回の補正予算をバックアップするのに十分であることをいっているにすぎない。

 そしてここを強調したいが、要するにいまの金融緩和で事足りるほど、財政政策が実はそんなに大きな規模をもっていず、ましてや上記のパワポ掲示した1)と2)の中長期的な効果を打ち消すには十分ではない可能性が大きいのである。政府と日銀がより協調的な政策を行うことをしなければ、最悪、政策のマッチポンプが繰り返されるだろう。それは政策の効果(経済主体への期待への働きかけ)を毀損してしまうリスクを高める。