2018年に一般公開された外国映画で記憶に残るベスト5

去年も時間をみつけては映画をみてきた。第一位に選んだのは厳密には昨年公開だが、今年も映画館でロングランしてたので入れました。

 

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1 『ゴッホ 最期の手紙』

名作だ。感動した。映画は総合芸術だが、ゴッホもまた総合芸術だということを実感させてくれた作品。超長年積読小林秀雄の『ゴッホの手紙』をこの作品を契機にして紐解いたが、わずか数ページで退屈で中断。同じ題材でもこうも違うのか? 映画の具象化と、日本的評論の印象論の差ともいえるか。いずれにせよ、この映画は見る人を多少は選ぶかもしれないが、ゴッホの人生に少しでも興味があれば見て損はないはず。

 

ゴッホ 最期の手紙 (字幕版)

ゴッホ 最期の手紙 (字幕版)

 

 

 

2 『ブリグズビー・ベア

 

 何気なしにみた映画だが、この種の外界から閉ざされた環境に長年いた人が、その世界から出たときに体験する物語、という最近よくあるパターンを踏襲している。『ワンダー 君は太陽』や『ギフテッド』、そして『プーと大人になった僕』など類似の設定を採用した映画が本当に増えた。しかもそれなりに良質な作品も多く共感する。ひとつには我々の社会や環境が分断され孤絶化しつつあるなかで、それでも分断を乗り越えたときに苦難の先にあるひとつのファンタジー的結末をこれらの作品は用意し、それに観客も満足しているのだろう。

 

ブリグズビー・ベア (字幕版)
 

 

 

 

3 『私はあなたのニグロではない

 

 ラウル・ペックの映画としては、『マルクス・エンゲルス』でもよかったが、やはりアメリカの現代史をボールドウィン狂言回しにして描いたこのドキュメンタリーは優れていた。黒人たちの直面してきたヘイトスピーチヘイトクライム、社会的差別や排除の歴史を、丁寧に描いているが、もちろんそれは今日の日本の問題を自省するときにも役立つ視線だった。

 

 

 

 

4 『さよなら、僕のマンハッタン

 

 普通の若者の成長物語と家族の再生を描いたものだ。そのストレートなつくりは、むしろ懐かしいぐらいだw。ケイト・ベッキンセールが知的で魅力的な、若者の乗り越えなければいけないあこがれの人を演じている。こういう使い古された状況設定の映画をたまにみると、ほっとするw。実はこの古臭い設定で、しかもノスタルジーや懐古趣味的な映画の代表が、『ボヘミアン・ラプソディ』のように思える。どちらでもいいのだが、あまり今後もふりかえることが少ないだろうこの映画をあえてランクインw。

 

 

5 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主

 

 SF作品からひとつを選ぶとすれば今年はこれかな。かなり評価がわれたようだが、魅力的なヒロインに恵まれ、映像美や世界観にも共感した。癒し系のSFとでもいうのだろうか? 今年は全体的に仕事がハードだったせいか、映画にも憩いを例年以上に求める展開になったり、あとは社会性の強い映画をみることが多かった。前者にはいい作品が多かったが、後者にははずれた作品も多く、社会的メッセージをいうまく入れ込んだ映画というのは難しいものなんだな、とあらためて思った。その意味で今年公開されたわけではないが、今年みた『無言歌』は大変に印象深い映画だった。同じ監督の最近作『苦い銭』を見逃しているのが残念である。

 

 

無言歌(字幕版)

無言歌(字幕版)

 

 

あと特筆すべき期待外れで映画としてはダメだったものが、『シャルギー(東洋人)』。自己満足に近い映画で焦ったw。ただし井筒俊彦の著作は別に再読してみたい気にはなっている(ただし昔と同じようにあんまりどうとも思わないかもしれないがw)。その意味で記憶すべきワースト映画としてあえて掲載w

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