ビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』(花伝社)

 1980年代、モザンビーク社会主義政権は、外貨獲得のために若者たちを当時の「兄弟国」東ドイツ期間労働者として派遣した。この作品は、遠い異邦の生活で青春を送った三人のモザンビークの若者(男二名、女一名)に焦点をあてて、それぞれの人生がどう変容し、時代の流れの中で翻弄されたかを描いている。

 彼ら&彼女たちが東ドイツにいる間、東ドイツ自体も崩壊し、統一ドイツが生まれる。またモザンビークでは激しい内戦が生じ、登場人物たちの故郷・縁故のある人々は根絶やしに近い状態になってしまう。モザンビーク政府が天引きしていた彼らの「預金」も横領されてしまい、登場人物たちはまさにドイツでもモザンビークでもその居場所を失ってしまうのだ。

 寄る辺なき人生を三者三様の人間模様で描いていくその筆致は素晴らしい。特に主人公たちの人生はそれぞれ重なっているので、三様の視点をみることができる。つまり異なる感情、異なる視点を同時にわれわれはマンガを通じて理解し、感情移入できるのだ。

 人生とはさまざまな解釈ができるものだ、ということを本作は改めて教えてくれる。

 日本でも移民問題は、「移民ネグレクト」ないしヘイト的なやり玉にしばしばあげられる。その状況も見据えながら、本作を読むことは多くのものを得ることができるだろう。

 まさに傑作である。

マッドジャーマンズ  ドイツ移民物語

マッドジャーマンズ ドイツ移民物語