ヲタクな古書紹介: 東晋太郎『外遊回顧』非売品

日本の厚生経済学の歴史や福田徳三について最近、集中して研究している。その関連でひとつの積み残している課題に、Welfareの訳語の「厚生」は中国の古典から採用されていて、それは三浦梅園の「価原」などでも利用されている、そして三浦梅園らの江戸期の学者たちに経済倫理的な思想について、現代の厚生経済学との差異、関連などを含めて考えたいと思っている。

 

その意味で、福田徳三に学んだ東晋太郎の江戸期の学者たちに関する経済倫理研究ははずせない。東の代表作は『近世日本の経済倫理』や『太宰春台の経済倫理』などであろう。また国会図書館でマイクロ化されている一連の経済学原理的な書籍、また欧州経済史の貢献、それに晩年取り組んでいた灘酒経済史の編纂も重要だろう。

 

東には短歌集もあり、明治期から昭和にかけて活躍していた経済学者のかなりの人数が、文学、詩歌、音楽論などで貢献を残していて、その文化人的な側面を東ももっている。東の短歌集は早稲田大学図書館など所属しているのを確認できる。CiNIIの検索をすると短歌集は三冊ほど出しているようだ。

 

また国会図書館はじめどの図書館にもCiNiiでの簡易検索で引っかからなかったのが、東が、1926年から一年半ほど欧州、米国での留学時につけていた日記をベースに、帰国してからの帰朝歓迎座談会をあわせて収録した『外遊回顧』(1931年)である。非売品となっていて、印刷者は岡村雅人という個人名である。著作兼発行者は東の名前があるので完全な私製本だろう。

 

他の研究者や東と縁のある人たちが保有していたり、検索にかからないだけで大学図書館などが保有しているかもしれないが、とりあえず僕が持っているのがただひとつ確認できているだけである。都内の古書店から数日前に購入。そんなに高くなく数千円だった。そのうち読んだら早稲田大学図書館にでも寄贈しよう。

 

東晋太郎について

www.kwansei.ac.jp