若田部昌澄「「話が通じない」トランプ時代の論壇〜ジェームズ・ブキャナンは雇われガンマンか?」in『アステイオン』2017年087号

 『アステイオン』が送られてきたときに、「このような高踏的な雑誌に誰が書いた?」と思ったら、若田部さんでした。それはさておきとても有益な論説です。まさに「ポスト真実」時代を経済学的視点から俯瞰していて勉強になります。米国での知識人と論壇の変化ー物事を批判的にみる知識人から特定の思想を伝える伝道師としてのそれーを、現在、米国で話題の書籍を通じて、米国での「話の通じない」議論の背景にある陰謀史観などの問題点を指摘していきます。

 陰謀史観の影響は米国だけではなく日本でも論壇の分断に寄与しているところです。経済学をネオリベとレッテルを貼るへんな人たちにはしばしば遭遇します(政府介入を積極的に支持するリフレ派にもネオリベとする奇妙な人にはネットは事欠きません)。さらに左右問わずに、安倍陰謀説、朝鮮陰謀説などの陰謀論にも事欠きません。その意味では、本論説で紹介されている米国の事情は日本にも当然にあてはまる問題であり、今後も深刻化するでしょうね。
 

アステイオン87

アステイオン87

若田部さんたちが行ったブキャナンへのインタビューは以下
Adam Smith, James Buchanan, and Classical Liberalism
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshet2005/48/1/48_1_124/_article

本書で中心的に議論されている書籍は以下

Democracy in Chains: the deep history of the radical right's stealth plan for America

Democracy in Chains: the deep history of the radical right's stealth plan for America

関連する邦語文献は以下

ダーク・マネー

ダーク・マネー

ブキャナンの代表作は以下

赤字の民主主義 ケインズが遺したもの (日経BPクラシックス)

赤字の民主主義 ケインズが遺したもの (日経BPクラシックス)