速水健朗&戸部田誠&みきーる『大人のSMAP論』(宝島社新書):感想

 SMAP関連の批評家による新書がこのところラッシュだった。主要なものでも、SMAP解散劇とマスコミ・事務所の在り方を批判的に検証することで多角的に論じた松谷創一郎さんの『SMAPはなぜ解散したのか』(ソフトバンク新書)、SMAP(とジャニーズ)と平成の日本を並行的に論じた中川右介さんの『SMAPと平成』(朝日新書)、大田省一氏の『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、そして特にジャニーズの音楽と日本の音楽や洋楽との関係を論証した矢野利裕さんの『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)など豊富だ。

 この中で本書『大人のSMAP論』は個人的に最も面白くまた勉強になった。やはり20年に及ぶジャニーズファンであるみきーる氏をいれたことが大きく貢献していて、批評的な視線では回収できないファン心理の一端がわかるものになっている。速水さんの“SMAPは「国民統合の象徴」”という言葉に代表されるように、80年代終わりから現在に至るまでの日本の状況との関連や、東日本大震災以降特に顕著になる国民に寄りそうSMAPというイメージは、他のSMAP批評本に多かれ少なかれ共通してはいる。その中で本書では、やはりドラマ、バラエティ、CM、そして彼らのスキャンダルや私生活の在り方までを軽妙な語りで三者がそれぞれちゃんと絡みながら話しているところが実に面白い。たぶん後から書き加えたところとその場でトークした部分が、後半少し文体の面で違和感があるところが気になったが、それ以外は対話のよさに引き込まれてしまった。

 SMAPが予想以上に自分の文化に対する見方の中で大きいものだと悟った今回の解散なのだが、本当に明日にでも再結成しないのだろうか? その自分の感情を本書を読んだ後に再確認した。

 SMAP批評本の中のベストである。

大人のSMAP論 (宝島社新書)

大人のSMAP論 (宝島社新書)