諸富徹編著『資本主義経済システムの展望』(岩波書店)

 岩波講座の現代シリーズの第三巻。平井俊顕先生の論文が入っているので、ケインズ学会つながりで読む。平井先生の論説は「資本主義経済30年考――グローバリゼーションの功罪」というもの。平井資本主義史観が簡潔にまとめられている印象がある。

 個人的に集中して読んだのが、吉原直毅氏の「資本主義的世界システムの経済原理」。ご自身の理論的論文の要約になっているので、かなり読みずらいのだが、それでも資本主義経済の動態的な動きについてのマルクスの利潤率低下傾向法則の現代的解釈や置塩定理の再考、そしてマルクス的搾取の現代的展望は参考になる。「経済的搾取」に関する考察が個人的にはツボにはいった。いつものように、縁付きエッジワースダイヤグラムに落とし込んで理解が可能だったので。