上念司『経済用語 悪魔の辞典』

 日々の経済や社会問題のニュースでしばしば見かける言葉に、上念さんらしい皮肉とエスプリ、そしてするどい批判で書かれた便利な経済用語集。序にもあるが本書はピアスの『悪魔の辞典』を高校のとき読んだ経験へのオマージュにもなっていて、上念さんの思想形成もわかる。「好況」「国土強靭化」「似非ケインジアン」「偽装保守」「新自由主義」などには刺激的な考察が並ぶ。ただしその記述は理論・データ・歴史的考察の三位一体で構成されていて、読者は自分で考えてそれらに対して自らの判断を形成することができるだろう。いまの白熱する経済政策や世界経済の見立てに一読をおススメする。