佐瀬昌盛『いちばんよくわかる!集団的自衛権』

 集団的自衛権の本で何がいいのかよくわからなかったが、知人たちが薦めていたので読んでみた。集団的自衛権の正しい定義、集団的安全保障との違い、旧新安保条約、国連憲章、平和条約、そして日本国憲法との関係の中での集団的自衛権の解釈の変遷。その変遷自体と認めないかのような1981年以降の内閣法制局の作成した集団的自衛権の「通説」化、また世論調査の読解の仕方から、現在の安倍政権における集団的自衛権の解釈変更問題についてもその「原理的」な側面が丁寧に解説されている。いまの政策論争を理解するいい一冊といえるだろう。いまの安保法制よりではない、批判的な見地のものも読んでみたい。

 また本書のメッセージの重要なところは、直接資料を自分で読み確認していくこという地味だがほとんどの人がやらない作業こそが、この集団的自衛権問題を考えるときに必須の事項であることを教えてくれたことにある。この種の門外漢ではあるが、一市民の常識と判断の材料として手元においておきたい一冊である。

なお本書によれば、集団的自衛権の定義は以下である。
国連憲章51条よりhttp://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/
「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」

いちばんよくわかる集団的自衛権

いちばんよくわかる集団的自衛権