AKB48はなぜモーニング娘。を超えられたのか?(『AKB48の経済学』中国語訳訳者序文)

 
AKB48の経済学』の中国語訳(簡体字)である『AKB48的格子裾経済学』(AKB48のチェック柄のスカートの経済学)の訳者である江裕真さんの訳者序文を、中国人留学生のテイイさんの協力を得て全文を日本語訳しました。

訳者序文 AKB48はなぜモーニング娘。を超えられたのか? 
江裕真

 私はモーニング娘のファンです。
 学生時代、一番人気の「LOVEマシーン」の歌声を聴いて知っていました。
それからずっと、モーニング娘。の成長記録を興味深く見続けてきました。その一方で、ファンに熱狂的に迎えられているAKB48という大人数のメンバーがいるグループ誕生して、マスメディアから「国民のアイドル」と呼称され、私の心にこのグループに対するたくさんの疑問が生じてきました。

 以前、その疑問を親友と討論しましたが、やはりこの『AKB48の経済学』の著者と同じような結論になったのです。従来のアイドルの観念と違い、握手会や公演終了後のハイタッチなどを通して、遠い存在だったアイドルを見近に感じるさせたこと、その成長していく過程をファンに見てもらうこと、会いに行けるアイドルとともにファンもまた成長していくことが、AKB48の特徴だと思います。

 2010年4月に東京に滞在したとき、秋葉原ドンキホーテAKB48の劇場に行きました。観客はほとんど授業を終わったばかりの男子高校生でした。モーニング娘。姉妹グループ℃-uteのライブ現場のファンたちと比べると、AKB48のファン層の年齢は割合に低いと思いました。田中秀臣によると、AKB48のビジネスモデルは低価格路線の設定がされており、収入の低い若年層のアイドルオタクにターゲットを絞ったマーケティング戦略であるといいます。

 また2012年9月に大阪に滞在したとき、大阪の難波駅NMB48劇場近くの秋葉原にも同様の店舗があるAKB48グッズショップとカフェ&ショップに行ってみました。店舗の看板には各メンバーのお勧めの当地グルメが掲載されていて、名古屋の姉妹グループSKE48の人気メンバー松井珠里奈もいました。AKB48に目を広げると、国内では姉妹グループが地方で展開されている一方、各メンバーのキャラは固定的ではないものの、概ね役割が分担されており、ファンはメンバー形成に直接的に関与できるという幻想をかきたてられるようになっています。また日本国内にも海外にもファンを増やしてきた運営戦略とこのことは密接に関わっていると思います。

 これについて、経済不況の中でAKB48が誕生し、不況下にも強い「デフレカルチャー」の1つだという説を田中は提唱しています。2013年1月、日本の新聞報道には、2012年NHKの紅白歌会の視聴率では、ももいろクローバ−Zの視聴率がAKB48を抜いたとありました。街頭でインタビューされた中年の女性は「日本経済の低迷時期に彼女たちの姿を見ると元気づけられる」と話していました。

 テレビの視聴率にかかわらず、一番のポイントは、経済不況の時期にAKB48や他のグループアイドルが世の中に受け入られており、支持された側面があったということです。AKB48と相撲の運営戦略の共通点や、またファンとの距離感を縮める運営手法など。例えば、劇場公演やブログなどで些細な発言などから得られるメンバー間の友人関係や性格といった様々な情報をネット上のコミュニティなどで共有し、事実上出費の伴わない消費を行っていること、成長する過程をファンに見せることがコンセプトであるという点が面白いところです。

 AKB48のファンにとしても、日本の文化やオタク文化に興味がある方に対して、この本はいろいろ勉強になるを思います。これからAKB48はどうなるのかまだわかりませんが、秋元康はかなり面白い事業構想を仕掛けてくるので、今後も注目したいと思います。

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