三浦小太郎『収容所での覚醒 民主主義の堕落』

 最近、嵌って読んだのが、下のエントリーにも書いた渡邊十絲子『今を生きるための現代詩』とこの三浦さんの著作である。一回、討論番組で同席したのがきっかけで、いつか著作を読んでみたいと思っていた。厳しい環境(監視国家、民族淘汰、テロリズム、戦争など)における人間の「自由」と「生存(権)」の意義を問うことが本書の一貫としたテーマだと思う。

 多くは書評や読書メモ、あるいは他者の言説と行動の分析という手法で書かれているが、どれも実に読み応えがある。最初の著作『嘘の人権 偽の平和』も読んだが、本書の方が数段、著作としての進展を感じた。本書のソルジェニツインについての考察を読みながら、僕は20世紀の独裁者の評伝を次々に訳している山形浩生さん、ソルジェニツーツイン論を起点に評論活動を始めた東浩紀氏らの試みをクロスさせて読んでみたい誘惑にかられた。これらの論者同様に、現代の世界をみる視座を本書は提供してくれるだろう。

収容所での覚醒 民主主義の堕落

収容所での覚醒 民主主義の堕落

嘘の人権 偽の平和

嘘の人権 偽の平和