西脇千瀬「幻の野蒜築港 明治初頭、東北開発の夢』

 河上肇賞本賞受賞作の刊行です。本書は、明治初期に宮城県の漁村だった野蒜にいきなりふってきた国際的な貿易港計画、つまりインフラ整備にともなうブームを、当時の埋もれた資料を発掘し、再考した作品です。しかも本書を書く過程で東日本大震災が起き、野蒜築港の記憶はさらに消失してしまいました。

 その地方が近代を迎えてみた夢の記憶の、近代的なンフラ整備の記憶がどのように失われていくのか。地味なテーマにみえて、これはまさに日本の記憶の批判的な再現でもあるのです。

幻の野蒜築港 〔明治初頭、東北開発の夢〕

幻の野蒜築港 〔明治初頭、東北開発の夢〕