野田政権、政府主導の「貧困ビジネス」化の加速=日本型クローニー資本主義

 野田佳彦首相の「円高対応政策」が発表された。円高そのものは放置し、あくまでも円高を前提にした上での「補助金政策」だ。民主党政権の経済政策の基本は鳩山政権のときから首尾一貫して、パイ(ケーキでもいいが)の大きさを一定にしたうえでのそのパイ(ケーキ)の切り方をどう分けるかをめぐるものでしかない。切り分け方をうまくやればパイの大きさが変わると思っているようだが、すでに政権をとって二年以上が経過したいま、その帰結は誰のめにも明らかだ。パイは大きくなるどころか、小さくなっている。震災や国際的な不況の長期化など外部のショックについて著しく経済の体質が弱くなっていることもこの民主党のパイの大きさが一定を当然視する政策の帰結でもある。そしてこのパイの大きさを一定ないし縮小を当然視したうえで、そのパイの切り方を工夫する政策というのは、簡単にいうとパイの切り手の利害に大きく依存する。ここに切り手の主要な利害関係者の巨大グループー政権参加者、上級官僚、学者・エコノミスト・評論家、マスコミの一部、財務省を中心とする天下り先政府関連機関(日本政策投資銀行など)、広告代理店・旅行業者など関連企業団体、労組の一部ーが直接・間接的に利益を享受する「分配結託」的な構造が生まれてくるだろう。

 特に先の7千億円足らずの「円高対応政策」はその象徴だ。こんなはした金では円高対策は無論のこと、真剣な補助金政策としても疑う額だろう。

 この政策については、山崎元さんが以下のような「仮説」を書かれて批判している。僕としては非常に納得のいく「仮説」だ。

山崎元のマルチスコープ「国の不幸を長期化させる霞ヶ関株式会社の「ビジネス・モデル」」http://diamond.jp/articles/-/14090?page=3

しかし、これは税金(政府資産)を使った一種の空洞化支援ではないのかという疑問が新たに生まれたことに加えて、今度こそピン!と来たのは、「ああ、これは『霞ヶ関』の利権拡大の手段なのだな」ということだった。

どういうことか。先ず、この図々しくも円高対策を名乗る資金を扱う組織だが、新しく基金を作るならポストが増えるし、JBIC(国際協力銀行)がまとめて扱うとしても、JBICの案件と、従って権限を大幅に拡大し、これは、財務省の国際派人脈にとっては、豊かな利権の源になる。

 報道されているように、資源確保や海外のM&Aに使うお金を、好条件で融資ないし出資して貰えるなら(注;市場で得られる好条件でないと案件が増えないから、案件の存在は何らかのメリットの提供を証明することになる)、企業にとっては大きなメリットがある、大変嬉しい話だ。対象企業は、財務省OBが「行ってもいい」と思えるような世間体のいい大企業が中心だろう。しかも、融資や出資は条件審査が複雑だから裁量の余地がたっぷりある。

 円高という「苦難」に対して、海外投資を支援する基金のような仕掛けを「対策」を名目に導入し、「霞ヶ関」側では「利権」を拡大・確保する。これは、「ビジネス・モデル」として既にパターン化されているものの、典型的な応用例なのではないか。

 これは円高やデフレ(国民の所得が目減りする現象)を放置したまま、一部の政権当事者を中心とした人々が利益を分捕り、そして国民の多くがより貧しくなるという意味で、政府主導の「貧困ビジネス」といってもいいし、あるいはその利害のおこぼれに与ることができるのが、政府の「縁故」だとすればまさにクローニー資本主義のそのものである。

 このようなビジネスモデルについては、(財務省の主要天下り先である絶対防衛圏のひとつ)日本政策投資銀行を経由してのものや、天下り先である中小企業向けの公庫を利用するものなど多様な形態が考えられる。その検証はまだだ。「仮説」に違いないが、その「仮説」はやがて白日のもとにさらされ、この民主党主導の政権の本質をそのうち国民の多くの目にさらすことになるだろう。