映画『ヤバい経済学』の中で、大相撲の八百長についてハードなタッチで短編をものしたアレックス・ギブニー。日本では町山智浩氏が詳しい論評を『ブルータス』などに寄稿している。町山氏の解釈も面白いのだが、例えば『ヤバい経済学』と最近再見した『エンロン』の共通するところは、閉鎖的な社会(大企業の上層部、相撲社会)での内部告発者に焦点を当てていることだ。
『エンロン』では元の副社長だった女性が代表的だったし(他にも告発者という役柄ではないが元女性重役の上層部の人物評として重要な役割が与えられていた)、『ヤバい経済学』の方ではもっと多くジャーナリスト、元関脇、元警察官などが、ノンフィクションの重要な位置をしめていた。
ジャーナリステックな手法を用いているのだから、閉鎖的な社会を解明するには、内部告発者たちは当然に重要な要素をしめるのだが、それを映像上でどう描くかは(単にニュースソースだけならば別にその内部告発者を登場させる必要性はない)映画監督としての個性がでてくるように思える。閉鎖社会の汚職を告発する人間の描かれ方をみてみると、『エンロン』の女性たちはかなりドライで大胆、『ヤバい経済学』の方はウェットな覚悟を表明し重い。西洋と東洋という対比もひょっとしたら監督の中にあったのかもしれない。
ギブニーは調べてみると日本にいた経験もあるし、父親は堺屋太一訳の『太平洋の世紀』という有名な本を著したフランク・ギブニーだというのもなんらかの影響をしているのかもしれない。アレックス・ギブニーが21世紀になってから撮った映画の多くは経済問題をわりと多く扱っていて注目しなければいけない人かもしれない。手元にカジノ・ジャックとゴンゾの米国版があるのでそのうち見よう。
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