中原伸之元日本銀行審議委員吼える!「日本は「四権分立国家」か?−日本銀行の「独立性」は天賦・固有の権利ではない」

 
 ついに中原氏の凱旋です。『景気とサイクル』誌(第50号)より。

 最近、日銀法改正の動きが超党派で見られることはおおいに歓迎される。特に第2条(理念)に加えて(金融政策の目標)を明確に規定することが喫緊に必要とされている。

 さて中原氏は、日本銀行の「独立性」などは現行の日本銀行法の条文のどこにも使用されていない、とした上で、それが三権と並ぶものだという意識(岩田一政『デフレとの闘い』など)はまったく誤りであり、憲法でも他の国権との独立は一切認められていないと指摘する。
 つまりマスコミがたまに喧伝する政府からの「独立性」は単に、マスコミや政治家たちの無批判・無反省・無知の表れにすぎないものになると中原氏はいいたいのだろう。辛辣である。

 むしろ、政府・国会は、「最大雇用」「安定的な物価」「穏当な水準の長期金利」を三大目標にして、日本銀行に与えるべきだとする。特に「安定的な物価」については、数値目標を政府と国会が与えるべきだとしている。

 その上で「独立性」はせいぜい日本銀行がとるべき政策手段についてだけ認める程度であり(中原氏はそれさえもニュアンスとしてはそういう意見が多いとする程度である)、これは「独立性」の余地がある。

 また日本銀行の「独立性」が云々されるときに問題とされる委員たちの「専門性」だが、これも「資格規定」が何もないのであれば、その政策委員の能力にばらつきが生じ、そこに外部の部署(中原氏はこの原稿では明示していないが、過去の著作によれば日銀企画局)の介入を許し、政策委員会が形骸化する可能性がある。それを許さないためにも、

これまで官房副長官が密室で決めていた日銀の総裁・副総裁・審議委員の選考を、公にし、国会に有識者・専門家からなる「日銀役員選考委員会」を設けるべきである、と書いています。

 中原伸之氏は1998年から2002年3月まで、激動の時代に日本銀行政策委員会の審議委員でした。その評価はこの10数年の総裁・副総裁・審議委員を含めた中で傑出した役割をしていたでしょう。ゼロ金利政策量的緩和政策はすべて中原氏の考案であり、それはミルトン・フリードマンら幅広い交友関係をもとに練られた政策です。他にもインフレ目標物価上昇率目標、外債購入政策、為替レート目標政策などいまでの必要とされるすべての政策メニューを、日本銀行の政策の場にあげました。ゼロ金利政策量的緩和政策もいち早く提案し、それが日本銀行内部では不当に無視されましたが、あきらめず、ついには日本銀行も採用することになったのです。遅ればせではありましたが。FRB議長のベン・バーナンキは「(中原氏を除いて)日銀の幹部はジャンク=くずだ」といったのはあまりに有名です。

 中原氏の主張を多いに取り入れて日本銀行法の改正と、来る来年三月の審議委員の交代を「なにもしない金融素人のイエスマン」「学者としての業績はあるが日本銀行の既存の政策に肯定的な人」を絶対に選ぶべきではありません。この二点に日本の将来が大きく関わっていると僕は思います。

日銀はだれのものか

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