「デフレ地獄・脱出への処方箋」(宮崎哲弥・菊池英博・安達誠司・飯田泰之)

 今月の『Voice』は個人的に読むところが多くて嬉しかった。上記の座談会以外にも。長谷川幸洋、若田部昌澄、山形浩生、そしてジョセフ・スティグリッツ諸氏の寄稿があり、それぞれ参考になる意見が多い。特に山形、スティグリッツ論説はあまり他では読むことのできない貴重な意見を述べているのでぜひ読んだ方がいいだろう。

 さて座談会だが、これもまたかなり楽しめた。特に変なことをいうワル筋な人がいないので論点がすべてかみ合っているので知識の多角的整理としても使えるだろう。それに対立している点ー財政政策の効果ーをめぐる菊池、飯田、安達三方の意見は議論がかみ合っているので、この財政政策の問題を考える上でも非常に参考になる。

菊池氏ー財政政策は効果あり。これを否定する若手には危機感表明。実証は一部の知識の集約にすぎないという「世間知」的立場をとっている

飯田ー菊池氏の懸念する若手の代表だと思うが、財政政策は効果きわめて限定的。実証も支持

安達ー日本のいまの状況で財政と金融をわけて考える意味がどれだけあるのか、必要なのは「政策レジームの転換」

というのがおおまかな三人のまとめであろう。

 僕自身の意見は安達さんの意見に近い。また財政政策だけにあえて焦点をしぼればここにすでに書いたこと以上のことをいうのは難しい。そしてこのエントリーで書いたことは財政と金融の境目(共同責任、協調)ともいえる。

「安達 やはり大事なのは、早いうちに考えられる政策をどんどんやることではないでしょうか。現実的に考えると、「財政か、金融か」という二分法は日銀と財務省との責任のなすりつけ合いになってしまう危険性が高い。それでもし失敗した場合、どちらが責任を取るのかということになって、結局どちらも出さないということになってしまって最悪です。結局、両者が協力しいて名目成長率を上げることができれば、財政問題もほとんど解決するのですから」

Voice(ボイス) 2010年 02月号 [雑誌]

Voice(ボイス) 2010年 02月号 [雑誌]