アクセス出演の感想ー専門知とポピュリズムの関係をめぐる雑感ー

 面白い番組で出演できて勉強になった。特に番組をお聞きになっている人の話や意見を直接に聞けるのはとてもいいと思う。ネットとは一味違う生身のやりとりに近いので刺激的でもある。

 ところで民主党の政権への期待度が高いというのはよくわかる。もう忘れてしまったろうけれども小泉政権のときも彼の経済政策への期待度は高かった。当時、某有名大学で、『構造改革論の誤解』に後になる話を講義でしていたら「先生はなんで小泉さんを批判するのですか。いまはみんな力を合わせるべき」と講義アンケートに書かれたことを思い出した。でも、もちろん僕は自分が学んだ学問をベースにして「おかしいことはおかしい」というのをやめるつもりはない。

 それにこれは権丈善一氏が『atプラス』の中で書いていたが、専門性の高い領域になると、ポピュリズム(=人気商売的政治術)が生まれる余地が大きくなる。高速道路無料化も子育て支援もそのほかの政策の多くも実は専門的な議論をすればかなり難しい話になる。郵政民営化構造改革のときもそうだったが、こういった個々の政策の効果が実際にはどうなるかよりも、政党や政治家は人々を「以前よりもましになる」というイメージ戦略で誘導していくことに利益を見出していく。多くの国民は専門的な知識を知るコストが大きすぎてそういう専門的な話を知る動機がそもそもないこと(これを合理的無知という)に乗じた政党のポピュリズム戦略の核心部分でもある。だからこそ、専門家や専門家の知識を理解する「ちょっとましなヘタレ知識人」が必要となってくるのだと思う。ますます体力的にヘタレてきたが、僕なりにそういう悪しきポピュリズムと対していきたい。

atプラス 01

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構造改革論の誤解

構造改革論の誤解