夏目房之介&竹内オサム編著『マンガ学入門』

 実はかなり前にこれは購入してた。しかしなんといっいいやらわからない著作で、まあ、よくある各論だけとりあえず勢力均衡に配慮して、メンツ集めて出してみました、という形容しか思いつかなかった。同時期ぐらいに購入されたid:ITOKさんがmixi日記(全体に公開)で的確に指摘されていたのを読んでからは、あえて触れる必要もないかなあ、と思っていた。ところがちょっとこれが「派閥争いがない」という証拠だという発言をmixi内某所で目にした。たぶんこの僕の発言http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090406#p2を読んでの発言じゃないのかな? 

 簡単にいうと、まさにこの各論ばかりで、通史も総論もないようなこの本の性格こそ、「派閥争い」そのものの結晶といってもいいんじゃないのかなあ。おたがいけん制しあって共通の「マンガ学」の仕上がりに失敗している、ということ。だいたいそもそもの「マンガ学」自体の定義もない入門書っていったい 笑*1。 

 それと一般的に派閥争い自体は別にど〜でもよくて、そういうのどこでもあることでしょ? 派閥争い自体はいわば風物詩的な意味しかもちえない。でもそれでひどい本を買うはめになるとか、ひどい税金(補助金)の使い方とか、ひどい社会への外部性に直面したらそりゃ一言いわないではおれんでしょうねえ。

 本書についてみれば、学問の体系化よりも人的な配置のバランスありきみたいな内容じゃあ、読む方もつらいと思いますよ。まあ、好意的にみれば、こういうマンガ批評家たちの顔見世総興業がありますよ、ということ程度なんでしょう。

マンガ学入門

マンガ学入門

*1:これ定議論だとバカにはできませんよ。例えばスコット・マクラウドの『マンガ学』では冒頭でちゃんと自分がどんなもの=マンガ を研究するのかちゃんと作業仮説的にではあれ定義して出発して絶えずその定義のもつ含意を振り返っている。アイスナ―の名著だってそう