日本銀行は民主主義の敵かもね

 日本銀行が民間銀行の株式の買取りを再開するそうだ。米国のジャネット・イエレン(サンフランシスコ連銀総裁)の発言http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090112#p1を想起するのだが、やはり前にエントリーで書いた以下の記述の体現だろう。

 さてFRB日本銀行の政策の違いを一言でまとめると

FRBのはマクロ金融政策、日本銀行のは金融システム安定化政策である」*5

 というのに結局は尽きる。前者が失業や物価の安定を目標にしているとすれば、後者は、例をあげれば銀行取付の回避とか銀行の貸出機能の健全化などを狙うものである、ということだ。もちろん日本銀行の政策当局者に「おたくは景気回復を目的にしてませんね」と質問しても100%の確率で否定するだろう。FRBの方でも金融システムの安定を考えていないわけではない。

 今回の措置は予防的な観点が色濃く出たものなのだろう。朝日新聞の記事をみているのだが、日本銀行にとっては思想的にも過去の経験からも「異例」ではなく、むしろ「伝統的」といえる措置だと思うのだが、どうも記事では日本銀行の薬をかがされたみたいで(笑)、政府がやらないから日本銀行がやると、まあ、いつもの責任回避の「ご説明」が奏効しているようである。苦笑。

 評価については、その朝日新聞の記事にある上野泰也さんの「どこまで金融システム安定化や株価下支え効果が出るかは不透明」というのが妥当だろう。

 むしろこの記事の関連で出てきた白川総裁の政府紙幣への異常なまでの警戒感が、前記した金融システム安定化、要するに特定の資産防衛主義がもろに露見した見解のように読める。デフレが急速に悪化するか可能性も避けられないなかで、通貨の信認=インフレ回避 を明言し、さらに長期金利の上昇を警戒するということは、このまま不況とデフレが続いてもいいと、みなすことに等しい。

 政府紙幣の発行が国債の日銀引き受けと同じであるならば、日本経済全体のためにはぜひ行うべきであろう。例えばFRBならばイエレンの発言を読めばわかるように、このような警戒を深刻な不況に直面した国民に対して発言することは避けたであろう。

 言い方をかえると、すでに総裁および日本銀行の政策当事者たち(会合に出てないインサイダーの連中)の脳裏には、日本の国民の厚生(失業とデフレの脱却)などどうでもよく。特定の資産を保有する「階級」(まるでケインズが批判した資産階級、金利生活者そのものであるw)を保護するという意図しかみえない。ケインズが恐慌の中でいったい国内のどんな政治的・経済的勢力と対抗したのか。もう一度考えてみるべきなのかもしれない。その延長で、金利収入に異常に配慮する日本銀行の体質、そして不況の中で消費税増税を目指す政治家(原田論説によればそれは高齢層の利益につながる)との暗黙の共闘が、長期の不況レジームをもたらす可能性も考えてみる必要がありそうである。

 あとエントリーでは「民主主義の敵」と書いたけれども、これはまあケインズよりもスティグリッツ先生がいいそうだと思ったのでそう書いてみた。ちなみに政府紙幣スティグリッツ案でもある。