原田泰「消費税増税と責任ある政治の中身」

 これも『東洋経済』に収録されているもの。そういえば昨日のパーティーで少しお聞きした話でもある。こちらは麻生政権の消費税増税の玉虫色決着への評価である。定額給付金をばら撒くが三年後に増税しますよ、といえば効果は減殺されてしまう。埋蔵金は国民のお金だから国民に戻すのがスジ。

 自民党は消費税増税をすることが「責任政党」だからだ、という説明をする。しかし原田さんはそれは違う、と私的します。「しかし消費税を増税する理由は、今の高齢者のための予算が足りないからだ」。つまり現在の高齢者の利害を優先した政策であり、本当の将来世代のことを配慮したものではない。もし本当に将来世代のためを考える政治家ならば増税国債の償還にあてるべきだが、そんなことをいう人はいない(これは皮肉)。

 さらに消費税増税高齢者は負担しない。なぜなら年金支給額は物価スライド制で消費税増額分だけ支給額が上乗せされ、勤労世代だけが負担する。しかし他方で高齢化にともない社会全体にしめる高齢者の消費規模が大きくなるのに、他方でいまの説明のように高齢者は制度的に消費税の増税負担を回避している。「消費税引き上げ時に年金給付額を加算すれば、現在1%で2.7兆円とされる消費税の実質的な税収額は半分になってしまう」。

 つまり本当に将来の財政負担を回避するならば、消費税の引き上げ分を年金支給額にのせないことである。しかし政治家の多くが、消費税増税高齢者に優遇することが政治に勝利する道だと理解しているので、それは行われることがない。

 原田さんの年来の主張であり、(ここの議論はとりあえず景気対策をおいておいた)消費税議論としては、世代間対立を鮮明に描いていることでも傾聴に値すると思う。

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