預金国家と借金国家でゼロ金利政策のもつ意味が違うって?

 またネタエントリーです。よろしくお願いします。

 これは『夕刊フジ』に掲載されてたものらしい。木走日記さんとういう方のところで見たので木走さんの記事おこしの労を利用してすみませんが一部分引用させていただきます

なるほど、日本は預金国民、米国は借金国民なのだ。

 「だから今回のゼロ金利は、米国民に対して徳政令に近い。対して日本のゼロ金利は銀行に対する徳政令。うるおうのは国民ではなく大銀行だ」

 米政府がゼロ金利に踏み切った目的は。

 「まず、消費マインドを冷やさない。次に国民の負担軽減だ。ゼロ金利は米国民は大歓迎だ」

 金融界やカード会社の収入は減らないのか。

 「当然減る。しかし米政府は国民救済に走ったのだ」

 ゼロ金利の意味が全く違うのだ。

 「日本のように国民の金融資産が1500兆円でゼロ金利をやるのは暴挙。民主国家と大企業国家の差がはっきり見える」

12月23日付け 夕刊フジ 4ページ コラム『鈴木棟一の風雲永田町』より

 簡単にいうとゼロ金利は米国では借金まみれの国民の借金をちゃらにする徳政令だそうで、反対に日本では金融資産が1500兆円もあるので「暴挙」だそうです。

 ええっと、定義がはっきりしないとすべてネタ扱いなのですが、この夕刊フジのコラムも同様です。

 まず家計あたりの可処分所得に対する負債総額は確かに日本より大きいですね。でも家計一人当たりの(対総資産に比した)負債総額がアメリカも日本もそんなに大差ないですね(この論文参照)。

 それと家計貯蓄率の対比をいって預金国家と借金国家というのであれば、日本の家計貯蓄率はそんなに高くなく、米国に逆転されています(最新の統計面倒なので比較してないけど。これとか読んどいてね)。

 こつこつ??貯金した成果を一部表す家計の金融資産額は日本も巨額ですがアメリカもそれを超えて世界一です。

 つまりこの夕刊フジのコラムの人は、日本は預金国家で、アメリカは借金国家だといってますが、彼がそのコラムの中で書いている記述から類推すると、その彼の定義自体がそもそも間違っているんじゃないでしょうか

1 日本とアメリカの家計の負債(対総資産など)はそんなに大差ない
2 家計貯蓄率は日本とアメリカは後者の方がいまや高い(だろう)
3 アメリカの方がはるかに日本よりも家計の金融資産総額が上回る(いまはどうなってるか調べるのネタだからやらないけど三倍くらいだったんじゃない?)

 うんで、「日本のように国民の金融資産が1500兆円でゼロ金利をやるのは暴挙。民主国家と大企業国家の差がはっきり見える」というんならば、米国の個人の金融資産は日本よりもはるかに上なので、アメリカでゼロ金利やるほうが日本でやるよりものすご〜〜〜く「暴挙」なんすけれども*1

 ちなみにゼロ金利がいまの日米ともにリフレ的な効果はないよりはあるでしょう。もちろんゼロ金利だけではまったくリフレ効果としては物足りないけれども。うんで、日本ではデフレとか不況でのリスク回避のために現金保有性向が異常に高まって資産選択のあり方が歪になっているので、ゼロ金利を含むリフレ政策はその回避のために効果があるんですよね。したがってゼロ金利だから「暴挙」じゃなくて、ゼロ金利まで追い込まれるような事態を招きさらにそれを長期化せざるをえない日本銀行FRBもその意味では同じだけどたぶん日本銀行ほどゼロをいったりきたりしないことを期待)の失敗の方が重罪。ゼロ金利を悪者にしてそれを回避しようとする日本銀行の「ご宣伝」を真にうけてはいけません。

*1:あとコラムの方では触れられてない?けれどもそもそも金融資産残高が米国の方が巨額なので現金預金も日本より総額では巨額…かも。これも最近調べてないのでわからんけどw