(今夜もお酒は飲まない)日本は不況をうまく活かせるのか???

 切込隊長ブログより

 だから、もう少し時間をかけて、っていうか不況を旨く利用して、経済効率が上がるような再編というのはどんどんやっていったらいいと思います。民間主導でも政策でもいいから、きちんとしたディールを重ねてメガなんちゃら化したほうがいいと。パナソニックが三洋買うとかで驚いてちゃいけないし、そういう再編に乗り遅れた微妙大手は潰れてしまえと。

 不況というのは、そういう無駄に生き長らえている使命を終えた存在を一掃する機会という意味で非常に貴重なんだろう。それは、経済に限らず、政治にしてもこの国のかたちを考え、あるべき体制、あるべき規制を見直すという絶好の機会だと思うんです。前回の不況は日本だけ微妙な感じに思われて何だか居心地の悪いリセッションだったけれども、今回はどこも苦しい、相対的に日本はまだ良好と思われていてお金もきちんとしたプレゼンをすればちゃんと集まる。やるならいまが最適だろうと思っているんです。

 こういう切込隊長の発言をみているとふたつのことに気がつく。ひとつは市場関係者発の「日本が諸外国よりまし」という「神話」。もうひとつは、不況をうまく生かして経済効率性と高める、というもの。

 すでに書いたことだが、

1)グローバル化云々によらず日本の落込みは諸外国に比べてひどい。統計をみよ。
2)グローバル化云々企業によらず日本の全産業で状況悪化(これも統計みよ)、というのがネタの主張だ。

 さすがに切込隊長の方のはてブをみると趣旨をご理解いただいている人もいる。最もいろんな要素を勝手に読み込んで盛り上がるのは個人の自由だし、それはそれなりにいまどんな通念が支配的なのかわかることで参考になる(まあ、程度によるけれども)。その「通念」のいくつかを切込隊長のエントリーは集中的に表しているのだろう。

 まず「諸外国よりまし」というのが、IMF統計だとか各国の経済統計を理由なく否定されるとまったく先にすすめなくなる。さすがに悪いけれども、切込隊長の目先の周りよりも公式統計の方を信じたい。それが納得できない人は別に説得したいとは思わない。そんなにときをおかずにその悪化を不幸なことだが国民のかなりの部分は実感するだろう(しない人も間違いなく存在する)。

 今回の不況はふつうの不況ではなく、さすがに日本だけに限ってみても最悪のものになるだろう。特にはっきりしていくのが(いまはまだ踊り場=調整局面だが)完全失業率の高まりだろう。この主の「実体経済」の悪化が、事態を正しく把握するものではないという人がいるならば、それは僕には理解できないだけである。

 株価が下落したり(逆に日本に相対的にましだからと資金が流入したり)、それで市場関係者が一喜一憂するよりも、僕はその市場関係者の一喜一憂よりも、失業率や成長率の変化により大きく関心を持ちたい。もちろん金融的現象が実体経済に影響をするならばそのかぎりで重視するが、いまの議論では実体経済の悪化を示す指標を無視しているようなので、そのような金融的現象への過剰な執着には反対である。

 それと日本の方が外国よりましで「相対的に日本はまだ良好と思われていてお金もきちんとしたプレゼンをすればちゃんと集まる」ということだけれども、(海外でも国内でも)投資家のマインドが極度にリスク回避的な状況では、「きちんとしたプレゼン」を行った安全資産(現金や国債)にお金が流入していき、それがますます日本の低迷を深めることになるのだけれども? 現にいまクロスでみた円高現象をみればわかるように、「きちんとしたプレゼン」をした円が大人気だが、その反面日本経済は常識的には火の車寸前である。

 この発想は基本的に強い円(きちんとしたプレゼンの円)論のサブプライム版でしかない。つまりこうだ、日本銀行がデフレも悪いことばかりじゃない。ちゃんとしたプレゼン(信認)を提起すれば円の価値はすごいあがる。円高を生かした事業を延ばせばガンガンいけるぜ、というのとまったく思考的枠組みはまったく同じ。

 もちろん日本経済全体(統計では成長率や失業率)が鋭角的に落ち込んでも、「きちんとしたプレゼン」や「強い円」で儲ける人や成功する人がいくばくかでてくるだろう。でもそれがどうしたの? 一億漫歩譲ってそれは僕にはど〜でもいい。

 清算主義の方はもう語るの面倒なのでブログでは省略。

(追記)切込隊長のおかげでネタエントリーとはいえ雑誌に書くテーマが見つかったので利用させていただく。出たら献本します。サンクス