原田泰・増島稔「金融の量的緩和はどの経路で経済を改善したのか」

 原田さんから教えていただく。
 http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis210/e_dis204.html

 本研究は、量的緩和政策の経済に与える全体的な効果とその波及経路をHonda et al.[2007]に基づいて分析を始めている。VARモデルによる検証を通じて以下の4つの点が明らかになった。第1に、マネタリーベースの増加は生産を増加させる効果がある。第2に、その経路としては、資産価格を通じる経路、銀行のバランスシートを通じる経路が重要であり、銀行の情報生産機能を通じる経路、為替レートを通じる経路、時間軸効果を通じる経路は確認できない。以上はHonda et al.[2007]の確認であるが、銀行のバランスシートを通じる経路は新しい発見である。さらにこれらの経路は、経路をより厳密に分析した場合にも確認できた。第3に、量的緩和は長期的には金利を引き上げる効果があり、時間軸効果、特にシグナル効果の存在には疑いが持たれる。第4に、量的緩和政策が行われていた時期と同様、伝統的な金利政策が行われていた期間においても、マネタリーベースは生産に影響を与えていた。これらの結果は、長期にわたる景気低迷を緩和する手段として金融政策が有効であったことを示唆している。

 マネーの増加が長期停滞を回避する手段として有効である、ということ。当たり前だが実に重要。