大竹文雄「子供の数だけ親に投票権を」

 今日発売の『週刊東洋経済』を書店が開くほんの数時間前に先読み(笑)。大竹さんのブログで予告されていたエッセイを楽しみにしていたが、期待通りの内容。僕も同様の懸念を抱いているので趣旨に賛成。

 人口の高齢化、若年層の投票率の低下が進んでいる。他方で団塊の世代はつねに若い頃から政治力を発揮し、高い投票率を維持してきた。団塊の世代高齢化するにしたがってその利害を反映する社会保障関連の支出が増加していくだろう。そして義務教育費支出は減少していく。

 「高まった高齢者の政治力によって、若年世代や将来世代にツケを回す政策が採用されることを防ぐ仕組みをつくることが必要だ。未成年の子供を持つ親に、子供の数だけ投票権を与えてみてはどうだろう」

 この提案は面白い。またすでに、このエントリーで書いたように僕のいまの関心はまさに老人達のGreedにある。。問題は長期的なものに思えるかもしれないが、すでに目前にある問題ともいえる。それは若年層の投票率低下(つまり自分たちの政治力が団塊の世代に比べて劣るので合理的に判断して投票にいかない)や年金や後期高齢者医療への世論の関心の度合いが高いことからも明らかでだ、と大竹さんは指摘しているのである。

 非常に面白い論説だった。

(補)ただいくつか気になる点があるのだが、大竹さんが依拠した年齢別の投票率調査をみてて思ったが、団塊の世代の次に大きな人口の塊である団塊ジュニアたちの投票率が、たぶん僕ら(40歳代)にくらべてもかなり低下していることだ。例えば衆議院の方だけ参照してみる。

http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/sg_nenrei.html

 僕はいま多少さばを読むとw40代のほぼ真ん中なんだけども平成2年以前の昭和末期は20歳代であり、このときの投票率は前世代にくらべると多少落ちるがまあまあの50%台。ところが僕らの後、10年ぐらい後にいる団塊ジュニアの世代が20歳代で投票を行ったと思われる平成0年代後半から10年代前半はものすごく低下。そして20歳代は現在までその大屈折を引きずっているといえる。彼ら団塊ジュニアは少なくとも僕らよりも人口構成比が大きいのだから僕らよりも投票率が高くてもいいように思える(彼らが30歳代になった15年、17年の選挙ともに彼らが僕らの世代以上にその団塊ジュニア権力を行使したようには思えない)。

 それとよくみると平成2年の選挙を境に高齢者層の一部を除いて、若年中年層の投票率が大幅に低下していることも確認できる。この平成5年、平成8年の選挙がほぼ20歳代から60歳代までの低下(若い世代ほど低下の度合いが大きい)を促したものに思える(似たことが参議院選挙でも起きていて平成元年をひとつのピークとして4年、7年と低下を決定的にしているhttp://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/sang_nenrei.html)。もちろん全体の投票率も低下している。

 ではこの平成2年の選挙(まだ昔の投票率を各世代ほぼキープ)と平成5年、8年の選挙の差異はなんだろうか。それは55年体制の終焉とか自民党一党制の崩壊、連立政権誕生、小選挙区制の導入などである。投票率が全体で低下していてそれ以降その低位定着がしていることをみると、人々が連立政権に自分達の利害が反映されにくくなったので投票しなくなったのか、それとも小選挙区制の導入が低投票に結び付いたのか(死に票の増加からやはり自分の利害が反映されにくくなったので投票率が落ち込んだのか)、あるいは他の要因があるのか(例えば平成5年といえばバブル崩壊後の不況が鮮明になったころ そこからの投票率の落込みは特に若年層では回復していない。例えば若年層で投票の機会費用が上昇したとか)、もう少し考えたいところ。特に最後の論点は20代、30代の経済状況の悪化と無縁ではもちろんないだろう。