容疑者小島寛之

 あ、タイトル間違えた、すみません。下の小島さんの新刊『容疑者ケインズ』のことでした。献本いただきました。どうもありがとうございます。

容疑者ケインズ (ピンポイント選書)

容疑者ケインズ (ピンポイント選書)

 wierdvisionの連載に全面加筆を加えて、小島さん独自のケインズ論が展開されています。よくジョークで7人の経済学者に意見を求めたら、答えが8つあり、そのうち2つはケインズのものだった、というのがあります。それと同じでケインズの経済学を解釈させたら答えが解釈者の人数以上にありそうなのが、ケインズ解釈の難しいところでしょう*1

 僕は基本的に小島さんのマクロ経済論には反対の立場なんですが、それでもこの小島流ケインズ論からインスピレーションを受ける人も多いかと思います。読みやすいし装丁がスタイリッシュなので一読されてはどうでしょうか。

 それと本書を読む前、後いずれでもいいと思いますが、小野善康さんの『不況のメカニズム』(中公新書)、それにより本書との対比を意識するならば竹森俊平さんの『1997年ー世界を変えた金融危機』(朝日新書)を読まれることをおススメします。おススメよりも必読レベルですが。

1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

 

*1:なぜ解釈者数よりも解釈の数が多いかといえば、それはこの解釈者の中には「ケインズ理論」と「ケインズ」を分けて考える人がいるからです。小野さんが典型ですが、「ケインズ」の発言の解釈よりも、「ケインズ理論」の解釈が重要視されてますので、例えば経済学史的な観点から「ケインズはそんな小野先生のケインズ解釈みたいなことはいっていない」という指摘に対して、小野さんはケインズの『一般理論』を再構築するかぎりでのケインズ解釈をしているのであって、なるほど確かにケインズ自身の学説史的解釈としてはそういう見方もありそれを排除するつもりはない=受容する、ということになります。小島さんのこの本も小野さん的な立場からの解釈かもしれません