中村さんから献本いただく。どうもありがとうございます。
『昭和恐慌の研究』では不十分だった農村問題に関する政策や政治的要因を明らかにするためには、この「新官僚」のリーダーといわれた後藤文夫の研究はきわめて意義のある貢献だと思います。この評伝シリーズの中で池尾さんの本と中村さんの本だけは楽しみにしていて(あとは内容が予想がつくので)、まさに現代の経済学の知見と現代的な関心の両面から、緻密な原典・資料研究を実行している点でも画期的なものだと思います。なんらかの賞の候補になるべき作品ではないでしょうか?
「五・一五事件から二・二六事件へと至る、まさに日本の現代史における画期としてのこの時期に、一貫して閣僚の地位にあった人物は、実は、後藤以外にいない」
台湾総督府総務長官としての植民政策への関与、今日まで綿々と続く国土開発や農政の形成への政治的な関与、そもそも戦前の官僚がどのような心性でどんな行動をしていたかを多彩な人物との交流から明らかにしている点(一例だが、安岡正篤との戦前における関係など)もこの本をきわめて豊かなものにしている。
必読
後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ (評伝・日本の経済思想)
- 作者: 中村宗悦
- 出版社/メーカー: 日本経済評論社
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 単行本
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