間宮陽介訳『雇用、利子および貨幣の一般理論』


 噂されていた新訳が登場。訳者まえがきは物足りない内容ですが、訳注は豊富。

ケインズの序文より

「これから見ていくように、貨幣経済とは本質的には、将来についての見解の変化が雇用の方向のみならずその量にも影響を及ぼす可能性をもつ経済のことである。将来につての見解が変化すれば現在の経済行動はその影響を免れない。しかしこのような経済行動を分析するわれわれの方法はあくまでも需要と供給の相互作用に依拠するものであり、このようにしてそれは基本的な価値理論と結び付けられる」(新訳xv-xvi)。


 これを見るとレジーム転換(経済主体の将来への態度をかえる経済的ルールの変更)が貨幣経済の本質にかかわる政策だということも支持されそうだし、また「基本的な価値理論」というのはこの時代ではミクロ経済学のことだからケインズのオリジナルな構想がすでにミクロ的基礎と無縁ではないことがわかるのではないだろうか。

雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)

雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)