小野善康先生と厨先生・韓リフほか飲み語る


 小野理論・小野啓蒙の解釈、そして山形さんの小野批判の再解釈、リフレ派と小野理論の接点整理のディープな話は、懇親会で行われたのである。以下は小野先生も内容は承認。オレが細部違えてたら懇親会第1テーブル(オレ、稲葉さんほか)にいたほかの人が修正してくらはい。それと報告会自体の簡潔な要約はecon-economeさんがしてくれてるのでそれを参照のこと。


つうわけで以下、断続的に付記予定。実は一年ぶりにお酒飲んで頭痛い 


小野先生の新書などの一連の著作を、例えばインフレターゲット論との関連でみれば、主に3つの局面で整理することができる。


1 小野理論のモデル自体
2 モデルを使った政策の話(vsこんにゃく問答)
3 アートとしての政策


 1の局面では、小野先生は、インフレターゲット理論としてクルーグマンモデルを対象とし、このモデルの問題点を指摘(新書参照のこと)。クルーグマンモデルではインフレターゲットの理論的基礎に失敗している、というのが小野先生の判断。またモデルの構造が違うのでクルーグマンのケースは小野モデルの特殊例でもない(報告会の野口コメント参照)。小野理論からいえることは、ゼロ%よりもかなり高いインフレ率が望ましく、また物価上昇率を政策的に動かすことがリフレ効果をもつということ。


 2.では実際にどのように動かすのか? 確かにマネーを大量に刷ればそれが将来のある時点でインフレにはなるだろう(その可能性は小野モデルからもいえる)。しかしいつかはわからない。この点についてのインフレ期待を動かす政策の理論化は、少なくとも小野モデルでは明示的にモデルになっていない。インフレターゲットの基礎に小野モデルがなるといわれても(モデルで論じてないので)蒟蒻問答になる。つまり小野モデルのモデル化されてない(あるいは最も理論的に自信のない)部分でインタゲを肯定する話もできるし、否定する話もできるが、それは結論がいまはでない。ただし小野モデルをベースにしたインタゲの理論化はやってみるのもいいだろう。


3 また理論ベースの話ではなく、実際の金融政策でインフレ目標政策などがデフレ対策の効果をあげることもあるだろう。そしてこれは小野モデルからいえることではないが、その政策の成果があれば尊重する。


 インフレ目標がモデルベースで話ができなくても、小野モデルからは、スティグリッツが提案しているようなシニョレッジを活用したリフレ政策は支持できるのではないか? という僕の質問に対しては、小野先生はイエス


 それと小野先生の方から以前の山形浩生さんとのネット上での論争(ここここを参照)についてのコメントが。要するに批判の物言いが厳しいと(^^;)。そこで厨先生を中心に、それは小野先生への期待値の高さの裏返しである、というフォローを入させていただきました*1。またその論争の後も、小野先生は環境対策などより具体的な内容で、(山形さんの)批判に応えようとした、とおっしゃいました(それも批判されてたけど、とのこと)。ただ今日の話で啓蒙の表現やそのやり方なども含めて、工夫や例示などにはより慎重な態度が必要かも、という話になったと思います。簡単にいえば問題は具体例をあげていくのではない、ということである程度認識が一致したように思えます。最近のRodrikの議論を紹介いたしました。


モデルベースで抽象的に話をすることはできますが、それを具体例で説明することや現実への応用をすることとは、これはなかなか別問題で難しく、僕なんかも日々ああでもないこうでもないと考えてるところですね。その意味で、今回の新書の夕張問題や21世紀になってからの30歳以下の世代交代消費の実現などは実証的な裏づけというよりもただの例示なのですが、僕の意見ではそれほどうまいものだとはいえないと思います。これは小野先生にも申し上げました。


 それと世代交代モデルで小野ニュータイプガンダム理論を書きます、と私、性懲りもなくいいまして、ご承認いただきますた。それと世代交代モデルについては、上記したように物価上昇率の操作を例えばシニョレッジ案ででも行うとすれば理論的に景気の回復が可能ですので、この世代交代循環を待つ必要性はないわけです。この話はむしろいまの30歳以降の人たちの世代の経済的可能性の高さやその反面でのルサンチマンによる経済格差の固定といった話題で昨日は懇親会で話題になりました。この世代交代モデルについてはフォーマルなものをまだ僕は読んでないのでそれを用いて近い将来に小野ニュータイプガンダムZ版を考えてみたいと思います。


以上、小野先生の『不況のメカニズム』を一読された上でお読みいただけると幸いです。


*1:というか小野先生の中で山形さんの存在の大きさに僕は率直に驚きました